不重宝ぶちょうほう)” の例文
祝家しゅくけを中心に、西の扈家荘こかそう、東のわが李家荘りかそう、三家は一族同体の仲なのに。……そうだ、杜興とこう、使いの口不重宝ぶちょうほうのせいかもしれん。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
津田は挨拶あいさつに窮した。向うの口の重宝ちょうほうなのに比べて、自分の口の不重宝ぶちょうほうさが荷になった。彼は手持無沙汰てもちぶさたの気味で、ゆるく消えて行く葉巻の煙りを見つめた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ねえ、お久しい……二十……何年ぶりですか。私は口不重宝ぶちょうほうで、口に出しては何にもいえはいたしません。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
や、不重宝ぶちょうほう、途中揺溢ゆりこぼいて、これはつゆが出ました。(その首、血だらけ)これ、うば殿、姥殿。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(心付く)不重宝ぶちょうほう。これはこれは海松みるふさの袖に記して覚えのまま、うしおに乗って、さっと読流しました。はて、何から申した事やら、品目の多い処へ、数々ゆえに。ええええ、真鯛大小八千枚。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)