不調法ぶちょうほう)” の例文
「ほんに、みどりさん、お前はいつもいつもこのような折は、不快じゃの不調法ぶちょうほうじゃの言いくるめて引込んでばかり。今日は許しませぬ」
口おしいことながら今こうしてお話し申しても、口不調法ぶちょうほうのわたくしには、あの怖ろしさ、あの不気味さの万分の一もお伝えすることが出来ませぬ。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
「御親類の若い御嬢さんでもあると、こんな時には御相手にいいですがね」と云いながら不調法ぶちょうほうなる余にしては天晴あっぱれな出来だと自分で感心して見せた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、不調法ぶちょうほうでして。」と、チチコフは愛想よく、さも残念そうな面持で答えた。
重「わしは重二郎と申しやす不調法ぶちょうほうものですが、どうか何分宜しく願います」
周禎が矢島氏を冒した時、長男周碩は生得しょうとく不調法ぶちょうほうにして仕宦しかんに適せぬと称して廃嫡を請い、小田原おだわらに往って町医となった。そこで弘化二年生の次男周策が嗣子に定まった。当時十七歳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昼はわしいのと、夜は疲れますので、つい/\不調法ぶちょうほうにもなりまして、皆様に御無沙汰を申上て居ります。然し夢はなつかしき千歳村の御宅の様子や、また私の母や妹の事など夢みます。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「手前が重々の不調法ぶちょうほう、その申し訳には腹を切るよりほかはござらぬ」
半七捕物帳:42 仮面 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
拙道せつどう煙草たばこ不調法ぶちょうほうぢや。らば相伴しょうばん腰兵糧こしびょうろうは使はうよ。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
口をしいことながら今かうしてお話し申しても、口不調法ぶちょうほうのわたくしには、あの怖ろしさ、あの不気味さの万分の一もお伝へすることが出来ませぬ。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
われわれのような不調法ぶちょうほうものの講話を御参考に供して下さるのは、この両者の接触上から見て、諸君の前に卑見を開陳すべき第一の機会をとらえた私は多大の名誉と感ずる次第であります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)