不興ふきょう)” の例文
娘は父親にいえば不興ふきょうこうむるのを知っていたが、病気の経過が思わしくないので、思い余ってひそかにA夫人に手紙を出したのであった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「それには、時節じせつがわるい。そんなことがわからなくてどうする。」と、父親ちちおやは、不興ふきょうげにいって、かえって、賢吉けんきちは、しかられたのであります。
僕のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「登城を許せば、その方が、一門衆の不興ふきょうをうける事も、修理は、よう存じているが、思うて見い。修理は一門衆はもとより、家来けらいにも見離された乱心者じゃ。」
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
エ、ペンペン草で一盃いっぱい飲まされたのですか、と自分が思わずあきれて不興ふきょうして言うと、いいサ、かゆじゃあ一番いきな色を見せるというにくくもないものだから、と股引氏はいよいよ人をちゃにしている。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
秀次は、長久手ながくての合戦にやぶれて後、秀吉の不興ふきょうをうけて
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狂言は、それから、すっぱが出て、与六をだまし、与六が帰って、大名の不興ふきょうこうむる所でおわった。鳴物は、三味線のない芝居のはやしと能の囃しとを、一つにしたようなものである。
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)