上下じょうか)” の例文
しかも優善はいわゆる心打しんうちで、良三はその前席を勤めたそうである。また夏になると、二人は舟をりて墨田川すみだがわ上下じょうかして、影芝居かげしばいを興行した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
上下じょうか三千の部屋からなっていたという、あのべらぼうな規模には比肩ひけんすべくもないけれど、その設計の理智的な複雑さにおいては、むしろジロ娯楽園の迷路に団扇うちわを上げなければならぬであろう。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すなわ上下じょうか議院の宏壮こうそう竜動府ロンドンふ市街の繁昌、車馬の華美、料理の献立、衣服杖履じょうり、日用諸雑品の名称等、すべ閭巷猥瑣りょこうわいさの事には通暁つうぎょうしていて、骨牌かるたもてあそぶ事も出来、紅茶の好悪よしあしを飲別ける事も出来
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かくの如く渋江氏の子が医を善くすることは、上下じょうか皆信じていたと見える。しかしこれがために、現に儒を以て仕えているものを不幸に陥いれたのは、同情がけていたといってもかろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)