七曲ななまが)” の例文
七曲ななまがりの険をおかして、やっとのおもいで、ここまで来たものを、そうむやみに俗界に引きずりおろされては、飄然ひょうぜんと家を出た甲斐かいがない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうかすると、遠く大手の七曲ななまがり口や井之口いのくち坂の方で、バチバチ小銃の音が聞えて来たりすることはあるが、搦手を守備しているわずかな兵は
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この「七曲ななまがり」といわれている街道は、昔、敵兵が攻めて来るとき、城の天主閣から、どの道に来てもわかるように、わざと紆余うよ曲折させたものだという。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
狼に食い殺されたのは笹子峠の七曲ななまがりあたりであって、食い殺された人は一人の薬売りと、それから魚屋と、もう一人危なく逃げたのは道中師であるらしく聞えます。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
切れもなく語りつがれているが、村々の子供には玉というもの、それに七曲ななまがりの穴を通したものなどということは考えにくいので、信州の南のほうではこれを法螺ほらの貝に緒を通すといい
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あれが千葉の病院へ行っているが、まだ己の方の勘定が二年や三年じゃあらちが明かねえんだ。あの吉田さんが寄宿舎にいた時から出来ていた女で、こないだまで七曲ななまがりのたなを借りて入れてあったのだ。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
今しも、笠取かさとりの盆地から、禅定寺峠ぜんじょうじとうげ七曲ななまがりを、ヒタヒタと登ってゆく武士の一群れがあった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「帰りにまた御寄おより。あいにくの降りで七曲ななまがりは難義だろ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もとより急ぐ旅でないから、ぶらぶらと七曲ななまがりへかかる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)