一飯いっぱん)” の例文
文「なんと御無心だが飯はありますまいか、昨夜はまんじりともせず、食事も致さぬ故、如何いかにも空腹でたまらぬが、一飯いっぱん助けてくれまいか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
薄志弱行の一途を辿たどるばかりで、わずかに、各所の無法者のゴロ部屋に寝泊りしたり、博奕わるさの立番をして一飯いっぱんを得たり、また、江戸の祭や遊山ゆさんの年中行事に
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一飯いっぱん君恩を重んずと云う詩人もある事だから猫だって主人の身の上を思わない事はあるまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たとい一泊を許されないにしても、暫時ここに休息して、一飯いっぱんの振舞にあずかって、それから踏み出そうと思っていたのであるが、それも断られて治三郎は腹立たしくなった。
夢のお七 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
主人にいて出ても、中途から気が変って道草をったりしては、水臭みずくさいやつだと主人におこられた。雄犬のくせでもあるが、よく家をあけた。せんぬし、先々の主、其外一飯いっぱんおんあるうちをも必たずねた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「性質のいい乞食こじきなのだ。一飯いっぱんめぐみにあずかりたいのだ」
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
文「成程、それももっとも、なんしても腹が減ってたまらない、飯が出来たら一飯いっぱん売ってはくれまいか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)