一括いっかつ)” の例文
と云って、主は戸棚とだなから一括いっかつした手紙はがきを取り出し、一枚ずつめくって、一枚のはがきを取り出して見せた。まさしく其人の名がある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、たそがれ近い頃、ひとまず祐筆にしたためさせたものを一括いっかつして、小出播磨守に下げ渡し、かつその奉行を命じて
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これらの条項を遺憾いかんなくそろえるためには過去の文学を材料とせねばならぬ。過去の批評を一括いっかつしてその変遷を知らねばならぬ。したがって上下数千年にわたって抽象的の工夫くふうを費やさねばならぬ。
作物の批評 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「野淵君は漫然と英雄のご利益りやくをといたが、いかなるものがこれ英雄であるかをかない、正しき英雄とよこしまなる英雄とを一括いっかつして概念的にその不可を論ずるは論拠においてすでに薄弱である」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「狭く考えるな。善いも悪いも、一括いっかつされて、舶載されて来るのが、文化の特質だ。低きへ水のつくように。ここ当分は、とうとうと西洋南洋からいろいろ雑多に入って来るだろう。いまやそれの東漸とうぜんは止まらない勢いにある」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)