一寝入ひとねいり)” の例文
旧字:一寢入
この言葉は日本でもそのまゝ真理で、実際牧師のお説教を聴くよりも、一寝入ひとねいり寝ておきた方がずつと利益ためになる事が多い。
一寝入ひとねいりしたと思ふも無く寺寺てらでらの朝の鐘が遠近をちこちから水を渡つて響くので目が覚めた。窓の下が騒がしいのでリドウを揚げると運河には水色みづいろの霧が降つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
夜になって一寝入ひとねいりして眼がめると、明かるい月が出て、その月が青い柳を照していた。それを寝ながら見ているとね、下の方で、急にやっという掛声が聞こえた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十分に手足をのばして楽々とねむりに就いたのが夜の十一時頃、それから一寝入ひとねいりして眼が醒めると、何だか頭が重いような、呼吸いき苦しいような、何とも云われぬ切ない心持がするので
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三人が一寝入ひとねいりしたでしょう、うとうととして一度目を覚ます、その時でした。妹の方が、電燈を手繰たぐって隣の室へ運んでいたのは。——(大変な虫ですよ)と姉は寝ながらものうそうに団扇うちわを動かす。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)