一定いちぢやう)” の例文
されば馬太またい御経おんきやうにもしるいた如く「心の貧しいものは仕合せぢや。一定いちぢやう天国はその人のものとならうずる。」
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こゝにかせをならべてさらしもする也。みなその場所ばしよ便利べんりにしたがふゆゑ一定いちぢやうならず。
たとへば澄見は秀林院様に、「いつもお美しいことでおりやる。一定いちぢやうどこの殿御の目にも二十はたちあまりに見えようず」などと、まことしやかに御器量をめ上げ候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
子をうみつける所はかれが心にありて一定いちぢやうならずといへども、千曲ちくま魚野うをのりやう河のがつする川口といふよりすなに小石のまじるゆゑ、これよりをおのれがうむ所とし、ながれの絶急はげしからぬ清き流水りうすゐの所にうむ也。
「かほどの大男のことなれば、一定いちぢやう武勇も人に超えつらう。召し抱へてとらせい。」
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一定いちぢやう一間ひとまどころに寝かいて置いたを、忘れてここまで逃げのびたのであらうず。されば翁は足ずりをして罵りわめく。娘も亦、人にさへぎられずば、火の中へもせ入つて、助け出さう気色けしきに見えた。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)