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やまがに
彼は焦燥しながら
鶴と
鶏と
山蟹の卵を食べ続けるかたわら、その
苛立つ感情の制御しきれぬ時になると、必要なき偵察兵を
矢継早やに
耶馬台へ向けた。
と見ると、その朝にかぎって、
扇形の
貯水池には小さなハヤや大きな
山女が、白い
腹を
浮かせて死んでいるのだ。あの強そうな赤い
山蟹まで、へろへろして水ぎわに弱っていた。
奴国の月は
田鶴のように
冠物を冠っている。爾は奴国の月を眺めて、我とともに
山蟹と
雁とを
食え。奴国の山蟹は赤い卵を
胎んでいる。爾は赤い卵を食え。
卑弥呼は竹皮を編んで敷きつめた酒宴の広間へ通された。
松明の光に照された緑の
柏の葉の上には、
山椒の汁で洗われた
山蛤と、
山蟹と、
生薑と
鯉と
酸漿と、まだ色づかぬ
獮猴桃の実とが並んでいた。