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もちいで
偖又文右衞門の女房は
勝手にて
番茶を入れ
朶菓子などを
取揃へて
持出たるに長八は大橋が
義氣の強きを彌々感じ心中に
成程斯まで
零落なしても武士の道を
切て早くも
人込の中へ
迯込だり軍平も
後より
追駈けれども終に
見失ひ切たる片袖は軍平が手に
殘りければ奧田が前へ
持出て只今火附を捕へんとせし處斯の如く袖を
相願はれ候
如何計ひ申さんといふに天一坊は
許すと計り言葉少なに言放せば大膳は
鍵取出し二品を取出し
三寶に
載持出伊豆守殿の前に
差置にぞ伊豆守殿初め重役の面々各々
手水して先御墨附を