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めんぷく
この時、衣服の制限を
立るに、何の身分は
綿服、何は
紬まで、何は
羽二重を許すなどと
命を
出すゆえ、その命令は一藩経済のため
歟、
衣冠制度のため歟、両様混雑して分明ならず。
ひょろながい道也先生は
綿服のまま壇上にあらわれた。かれはこの風の中を
金釘のごとく直立して来たのである。から風に吹き
曝されたる彼は、からからの
古瓢箪のごとくに見える。
新任の
奉行の
眼が
光るので、
膝元では
綿服しか
着られない
不平を
紛らしに、こんなところへ、
黒羽二重に
茶宇の
袴といふりゆうとした
姿で
在所のものを
威かしに
來たのだと
思はれたが