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饑
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う
ふりがな文庫
“
饑
(
う
)” の例文
次には「怖ろしき事四方において彼を
懼
(
おそ
)
れしめ、その足に従いて彼を追う」、そして「その力は
饑
(
う
)
え、その傍には
災禍
(
わざわい
)
そなわり……」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
ヒューヒュー鳴るは風に吹かれて、木々の
梢
(
こずえ
)
が啼くのでもあろう。遥かの山の峰の方から、鋭く吠える獣の声は
饑
(
う
)
えた狼の声である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
思ふに
饑
(
う
)
ゑを恐るゝこといと大いなりしときのエリシトネといふともそのためにかく枯れて皮ばかりとはならざりしならむ 二五—二七
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
桃太郎は意気
揚々
(
ようよう
)
と鬼が島征伐の
途
(
と
)
に
上
(
のぼ
)
った。すると大きい
野良犬
(
のらいぬ
)
が一匹、
饑
(
う
)
えた眼を光らせながら、こう桃太郎へ声をかけた。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ふだん陰気なくせに、一たん向けられると、何という浅ましくがつがつ人情に
饑
(
う
)
えている様子を現わす年とった男だろうと思う。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
〔譯〕
朝
(
あさ
)
にして
食
(
くら
)
はずば、
晝
(
ひる
)
にして
饑
(
う
)
う。
少
(
わか
)
うして學ばずば、壯にして
惑
(
まど
)
ふ。饑うるは猶
忍
(
しの
)
ぶ可し、
惑
(
まど
)
ふは奈何ともす可からず。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
しばらく好きな書籍の顔も見ずに暮していた捨吉の
饑
(
う
)
えた心は、まるで水を吸う乾いた
瓶
(
かめ
)
のようにその書籍の中へ浸みて行った。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「どうして/\。支那人に椅子でも宛てがつてみなさい、
饑
(
う
)
ゑ
死
(
じに
)
するまでも、椅子に腰を下して、じつと写真に見とれてまさ。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
若
(
も
)
し彼の
眼
(
まなこ
)
に
睨
(
にら
)
まれんとも、互の
面
(
おもて
)
を合せて、
言
(
ことば
)
は
交
(
かは
)
さずとも
切
(
せめ
)
ては相見て相知らばやと、
四年
(
よとせ
)
を恋に
饑
(
う
)
ゑたる彼の心は
熬
(
いら
)
るる如く動きぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
饑
(
う
)
え切ってきりきりいたむ腹、かわき切ってひりひりいたむ喉、目は砂ぼこりでかすみ、腰に結びつけられた重荷の
軛
(
くびき
)
の情け容赦のない重さ。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
かく打ち
謝罪
(
わぶ
)
るときしも、幼児は夢を破りて、睡眠のうちに忘れたる、
饑
(
う
)
えと寒さとを思い出し、あと泣き出だす声も疲労のために
裏涸
(
うらが
)
れたり。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
綾小路は目と耳とばかりで生活しているような男で、芸術をさえ余り真面目には取り扱っていないが、明敏な頭脳がいつも何物にか
饑
(
う
)
えている。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして小浜は、
遥
(
はる
)
か左手の
霞
(
かす
)
んだ、海岸線の北の方! この疲れと
饑
(
う
)
えの足で、まだ六里では私は
落胆
(
がっかり
)
しました。もう足が意地にも、進まないのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
敵軍の飛行機の破損したのを
繕
(
つくろ
)
って、それで島を
遁
(
に
)
げ出す、その時に、島に迷って
饑
(
う
)
えていた一匹の猫を哀れがっていっしょに連れて行く記事がある。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
隣人愛の教説者として有名な
無腸公子
(
むちょうこうし
)
の
講筵
(
こうえん
)
に列したときは、説教半ばにしてこの聖僧が突然
饑
(
う
)
えに駆られて
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
弟の阿利吒は尊げなる僧の
饑
(
う
)
ゑたる
面色
(
おももち
)
して空鉢を
捧
(
ささ
)
げ還る
風情
(
ふぜい
)
を見るより、図らず
惻隠
(
そくいん
)
の善心を起し、
往時
(
むかし
)
兄をば
情
(
つれ
)
なくせしことをも思ひ浮めて悔いつつ
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
自分は大した贅沢な生活を望んで居るのではない、大した欲望を抱いて居るのではない、月に三十五円もあれば自分等家族五人が
饑
(
う
)
えずに暮して行けるのである。
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
この東京には
饑
(
う
)
えに泣いている人間が数えきれぬ程あるのに、なんの意味もない、あの園遊会騒ぎは何だ! なるほど法律は正義をまもってくれているのかも知れん。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
父よ、父よ、あわれんで下さい、私たちは
饑
(
う
)
えかわくようにあなたのお顔を見たがっております。
魚と蠅の祝日
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
饑
(
う
)
えた者が食物をつかもうとして、われを忘れて手をのばしている間は、まだ仕合わせである。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それはどうでもいいとして、この話は、話題に
饑
(
う
)
ゑて居る
田舎
(
ゐなか
)
の人々を喜ばせた、当分の間。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
讀書
(
どくしよ
)
は
彼
(
かれ
)
の
病的
(
びやうてき
)
の
習慣
(
しふくわん
)
で、
何
(
な
)
んでも
凡
(
およ
)
そ
手
(
て
)
に
觸
(
ふ
)
れた
所
(
ところ
)
の
物
(
もの
)
は、
其
(
そ
)
れが
縱令
(
よし
)
去年
(
きよねん
)
の
古新聞
(
ふるしんぶん
)
で
有
(
あ
)
らうが、
暦
(
こよみ
)
であらうが、一
樣
(
やう
)
に
饑
(
う
)
えたる
者
(
もの
)
のやうに、
屹度
(
きつと
)
手
(
て
)
に
取
(
と
)
つて
見
(
み
)
るのである。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
食物
(
たべもの
)
といっては、昼から
幾
(
ほと
)
んど何をも取らない二人は、口も利けないほど
饑
(
う
)
え疲れていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
二人で
饑
(
う
)
えても離れて心配するよりいいというような泡鳴からの手紙を読むと、想思の人が東西を離れるようになるとは、ほんとに
憂世
(
うきよ
)
ではあるといい、苦労をともにする人は
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そして其のただ一つの報いとして、彼女は赤ん坊を抱いたまま棄てられて了った。彼女はいつも勇敢に闘って行った。しかし彼女は寒さと
饑
(
う
)
えとに対する不平等な闘いに負けた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
十二人は正体もなく
寝框
(
ねかまち
)
にころがっていたが、どうやら命の瀬戸を切りぬけたようすなので、誰も彼も生きかえったような心持になり、
粮米
(
ろうまい
)
を出してまず
饑
(
う
)
えをふさぐ仕事にとりかかった。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
若し英雄ありて時を
済
(
すく
)
はずんば天下の乱近くぞ見へにける。是より先き定信安田家より出でゝ白河の松平氏を継ぎ、賢名あり、年
饑
(
う
)
ゆるに及んで部内の田租を免じ婢妾を放ち節倹自ら治む。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
われを
饑
(
う
)
ゑ死なしむるはいつの日か。
生けるものと死せるものと
(旧字旧仮名)
/
アンナ・ド・ノアイユ
(著)
最
(
もつと
)
も
醜
(
みにく
)
く美しく
饑
(
う
)
ゑてひそめる
仇敵
(
あだがたき
)
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
わが
饑
(
う
)
ゑたる心を照せよかし。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
すぐれた
饑
(
う
)
ゑを感じながら
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
われ
饑
(
う
)
ゑてある日に
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
浪人数万
出
(
い
)
でましたが、仕官は出来ず
饑
(
う
)
えに迫り、一家離散、親子別離、ある者は猫の蚤とりなどという、賤業にさえたずさわり
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そは汝、貧しく、
饑
(
う
)
ゑつゝ、
畠
(
はた
)
に入り、
良木
(
よきき
)
の種を
蒔
(
ま
)
きたればなり(この木昔
葡萄
(
ぶどう
)
なりしも今
荊棘
(
いばら
)
となりぬ)。 一〇九—一一一
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
幾度
(
いくたび
)
饑
(
う
)
え、幾度殺されそうにしたか解らないこの
死
(
し
)
に
損
(
そこな
)
いの畜生にも、人が来て頭を
撫
(
な
)
でて、
加
(
おまけ
)
に、
食物
(
くいもの
)
までも
宛行
(
あてが
)
われるような日が来た。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一体
饑
(
う
)
えた人間に同情して餅を与える心、それは切実なもので水が高い所より低い所へ就くのと同じ必然である筈です。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
貸して
饑
(
う
)
えないようにしてやって下さい。おねがいです。僕の跡を追いますから、どうかやさしくなだめてやって——。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
秀麿の心理状態を簡単に説明すれば、
無聊
(
ぶりょう
)
に苦んでいると云うより外はない。それも何事もすることの出来ない、低い刺戟に
饑
(
う
)
えている人の感ずる退屈とは違う。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
まして定基の妻からは、それこそ
饑
(
う
)
えたる者が人の美饌を享くるを見る
感
(
おもい
)
がしたろうことは自然であって、余計にもしゃくしゃが募ったろうことは測り知られる。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
計らずもその
夢寐
(
むび
)
に忘れざる姿を見たりし彼が思は
幾計
(
いかばかり
)
なりけんよ。
饑
(
う
)
ゑたる者の
貪
(
むさぼ
)
り
食
(
くら
)
ふらんやうに、彼はその一目にして
四年
(
よとせ
)
の求むるところを求めんとしたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
若
(
も
)
しミツシヨンより金を
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
が
精神上
(
せいしんじやう
)
彼
(
かれ
)
と
彼
(
かれ
)
の
教会
(
けうくわい
)
の上に
害
(
がい
)
ありと
信
(
しん
)
ずれば
直
(
たゞち
)
に之を
絶
(
た
)
つにあり、我れ
饑
(
う
)
ゆるとも可なり、我の
妻子
(
さいし
)
にして
路頭
(
ろとう
)
に
迷
(
まよ
)
ふに至るも我は
忍
(
しの
)
ばん
問答二三
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
読書
(
どくしょ
)
は
彼
(
かれ
)
の
病的
(
びょうてき
)
の
習慣
(
しゅうかん
)
で、
何
(
な
)
んでも
凡
(
およ
)
そ
手
(
て
)
に
触
(
ふ
)
れた
所
(
ところ
)
の
物
(
もの
)
は、それがよし
去年
(
きょねん
)
の
古新聞
(
ふるしんぶん
)
であろうが、
暦
(
こよみ
)
であろうが、一
様
(
よう
)
に
饑
(
う
)
えたる
者
(
もの
)
のように、きっと
手
(
て
)
に
取
(
と
)
って
見
(
み
)
るのである。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そして庭の緑に眼を放ちながら、麺麭をちぎり卵を
抄
(
すく
)
い……私が
饑
(
う
)
えを満たしている間、娘二人は両端に座を占めて、紅茶を飲みながら久しぶりの客をもの珍しそうに、東京の話
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
が、
饑
(
う
)
えた動物ほど、忠勇
無双
(
むそう
)
の兵卒の資格を具えているものはないはずである。彼等は皆あらしのように、逃げまわる鬼を追いまわした。犬はただ
一噛
(
ひとか
)
みに鬼の若者を噛み殺した。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
確かにこれは
聖
(
きよ
)
く
優
(
すぐ
)
れた魂の声だ、と悟浄は思い、しかし、それにもかかわらず、自分の今
饑
(
う
)
えているものが、このような神の声でないことをも、また、感ぜずにはいられなかった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
其
(
そ
)
の
情
(
なさけ
)
で、
饑
(
う
)
ゑず、
凍
(
こゞ
)
えず、
然
(
しか
)
も
安心
(
あんしん
)
して
寢床
(
ねどこ
)
に
入
(
はひ
)
ることが
出來
(
でき
)
た。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ふふ。若い御隠居がこんな田舎で人間性に
饑
(
う
)
ゑて御座る?」
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
絶えず
饑
(
う
)
ゑたる
心臓
(
しんざう
)
の
呻
(
うめ
)
くに似たり。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
すぐれた
饑
(
う
)
ゑを感じながら
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
なにを云やがる途方もねえ、世間に気兼ねして働かねえと?
饑
(
う
)
え死んだらどうするだア! ああ饑え死ぬとも饑え死ぬとも。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
饑
漢検1級
部首:⾷
21画
“饑”を含む語句
饑渇
饑死
饑饉
饑餓
大饑饉
饑餲
饑饉年
災難饑餓
糧饑
肚饑
饑者
饑餓行進