點頭うなづ)” の例文
新字:点頭
「ええ……」路易はためらひがちに點頭うなづいた。數時間後、その詩人の家を出た時には彼はひどく物足りなさうな顏をしてゐた。
(旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
從者ずさは近きあたりの院に立寄りて何事か物問ふ樣子なりしが、やがて元の所に立歸り、何やら主人に耳語さゝやけば、點頭うなづきて尚も山深く上り行きぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わたくしだまつて點頭うなづくと夫人ふじんしづか立上たちあがり『皆樣みなさまのおみゝけがほどではありませんが。』とともなはれてピアノだいうへのぼつた。
へば平常つねだてにるべきねがひとてうたがひもなく運平うんぺい點頭うなづきてらばきてくかへれ病人びやうにんところ長居ながゐはせぬものともにはなべなりとれてきなされと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遠い戰國や李唐時代を引く迄もなく、最近の中華民國の有樣を見ても、成程と點頭うなづかるる所が多い。
支那人の妥協性と猜疑心 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
平次は靜かに點頭うなづいて、主人の導くまゝに奧へと進みました。多勢の雇人達は、恐ろしい不安に縮み上つて、障子の蔭から、縁側の隅から、それを見遣つて居ります。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
無言に點頭うなづいて、自分は坐つてまた横になつて、先づ菓子を頬張つた。渇き切つた咽喉を通つて行くその不味まづさ加減と云つたら無い。思はずも顏をしかめざるを得なかつた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
いごかねえでろぢいべてえものでもねえか」おつぎはやはらかにいつた。卯平うへいたゞ點頭うなづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何の事だ自分の横に坐つてゐる角帶を締めた若旦那らしいのが鷹揚に振返つて點頭うなづく。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
夫人はわれと杯を打碰うちあはせて、意味ありげなる目を我面に注ぎ、これをさばや、よき機會をりのためにと云ふに、我友點頭うなづきてげに好機會は必ず來べきものぞ、屈せずして待つが丈夫ますらをの事なりと云ふ。
あげふるひ聲して仰せの通り相違御座なく如何にも吾助殿と申合せ宅兵衞殿をあざむき金子五兩もらひ受候と申立るに越前守殿點頭うなづかれ如何に吾助兼は既に白状はくじやうに及びたり斯ても未だちんずるやと種々さま/″\に事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
道臣はそれを碌に聞かないで、たゞ「ふん、ふん」と點頭うなづいてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
*クロニーオーンしか宣んし點頭うなづき垂るゝ双の眉
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
さうして向き向きに 何か點頭うなづき合つてゐる
山果集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
K君は點頭うなづいて熱心に眺め入つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ブロクルハースト氏は點頭うなづいた。
孝子は笑つて點頭うなづいた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
村童は只點頭うなづくのみ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
をはつて、少年せうねんだまつて點頭うなづくのをましやりつゝ、三人みたりうながして船室キヤビンた。
平次はそれを見渡して一寸躊躇しましたが、三人の男が、一緒に來た八五郎の顏を見て、變な眼付きで點頭うなづき合ふのを見て取ると、その儘默つて奧へ通つてしまひました。
「なあぢゝはうがよかつぺ」といひけた。卯平うへいしがめるやうなかすかに點頭うなづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なほつてれ、よ、よ、こらゆきいか、わかつたかとへば、たゞ點頭うなづいて、はいはいとふ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝなり、なりと點頭うなづきしが、然るにても痛はしきは維盛卿、斯かる由ありとも知り給はで、情なの者よ、變りし世に心までがと、一に我を恨み給はん事の心苦こゝろぐるしさよ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
丁度自分もそれを感じてゐたところであつたので、無言に點頭うなづいた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
見られ小夜衣其方事も久八が申立たる事どもおぼえ有やと尋問たづねらるゝに小夜衣は長庵が五十兩の金子千太郎よりかたり取し事は千太郎存生ぞんしやうせつ私し方へ參られし折柄委細に聞及びし故甚だくやしく思ひ居候と有體ありていに申立ける程に越前守殿點頭うなづかれ引合の者共悉皆こと/″\く申立により長庵が惡事あくじ箇條かでう明白めいはく了解わかりたり因つては
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なゝめ茶碗ちやわんみづつた紙捻こよりがだん/\にみづうて點頭うなづいたやうにくたりとつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何事か暫しさゝやきしが、一言毎ひとことごと點頭うなづきてひやゝかに打笑める男の肩を輕く叩きて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
何事なにごと天命てんめいです、しか吾等われらこの急難きふなんのぞんでも、わが日本につぽんほまれきづゝけなかつたのがせめてもの滿足まんぞくです。』とかたると、夫人ふじんかすかにうち點頭うなづき、俯伏ひれふして愛兒あいじくれないなるほう最後さいご接吻せつぷんあた
と言ふ平次の問ひに、困つたことに點頭うなづいた材木屋は一軒もありません。
さききてもるかきかれませねばなににてもよしくるまたのみなされてよとにはか足元あしもとおもげになりぬあの此樣こんくるまにおしなさるとかあの此樣こんくるまにと二度にど三度さんどたかかろ點頭うなづきてことばなしれも雪中せつちゆう隨行ずゐかう難儀なんぎをりとてもとむるまゝに言附いひつくるくだんくるまさりとては不似合ふにあひなりにしき上着うはぎにつゞれのはかまつぎあはしたやうなとこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
諦められさうもない樣子ですが、平次は靜かに點頭うなづきました。
平次はもう一度強く點頭うなづきました。