かうべ)” の例文
そはわが用ゐて形をとゝなふ諸〻の火のうち、目となりてわがかうべが輝く者、かれらの凡ての位のうちの第一を占むればなり 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
つれて參りますと主個あるじに言てにはかの支度辨當べんたうつゝ吹筒すゐづつげ和吉を呼で今日は吾儕わしが花見に行なれば辨當を脊負しよひともをしてと言ば和吉はかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みやというものは、あれはただお賽銭さいせんあげげて、拍手かしわでって、かうべげてきさがるめに出来できている飾物かざりものではないようでございます。
いはく、ひだりよ。羿げいすなはちゆみいてて、あやまつてみぎにあつ。かうべおさへてぢて終身不忘みををはるまでわすれずじゆつや、ぢたるにり。
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
上人様の御眼にかゝり御願ひをいたしたい事のあつてまゐりました、どうぞ御取次ぎ下されまし、とかうべを低くして頼み入るに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
木盒きばこしきりを施し、それに十二の孔を穿てり。孔ごとにかわづを伏せて、細き杖もて、そのかうべを敲けば、蛙は哇然と声たてぬ。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
當時こそ片々の畫圖となりて我目に觸れつれ、今に至りてかうべめぐらせば、その片々は一幅の大畫圖となりて我前に横はれり。是れわが學校生活なり。
漁史は、しずかに身を起し、両腕こまねきてかうべを垂れしまま、前に輪を為せる綸を埋めんともせず、小ランプに半面を照されて、唯深く思いに沈むのみなり。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
𢌞廊のあなたに、蘭燈らんとう尚ほかすかなるは部屋へやならん、主はふかきにまだ寢もやらで、獨り黒塗の小机に打ちもたれ、かうべを俯して物思はしげなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
満枝は惜まず身をくだして、彼の前にかしらぐる可憐しをらしさよ。貫一は如何いかにともる能はずして、ひそかかうべいたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
廿一日朝、赤彦君はかうべをあげて、みんなに茶を飲みに来るやうに云つた。中村憲吉、藤沢古実、丸山東一、久保田健次の諸君、不二子さん、初瀬さんが集まつた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここにピラト、イエスをとりて鞭つ。兵卒ども茨にて冠冕かんむりをあみ、そのかうべにかむらせ、紫色の上衣をきせ御許に進みて言ふ『ユダヤ人の王やすかれ』而して手掌にて打てり。
鬼神 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
わかい彼蘭軒が少い此山陽をして、かうべを俯して筆耕を事とせしめたとすると、わたくしは運命のイロニイに詫異たいせざることを得ない。わたくしは当時の山陽の顔が見たくてならない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
許せしとはいへども、肉膚を許せしにはあらず、誠心を許せしなり。この誠心は抛げて八房のかうべにかゝれり。かれもしこの誠心を会得すれば好し、然らざれば渠を一刀に刺殺さんとの覚悟あり。
きつかうべつてゐる。知事に訊くと、知事はまたわざと、顔をしかめて
ペーネレオース斬りさげて落すかうべは一枚の
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
擧首看浮雲 かうべを挙げて浮雲を看る。
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
慈父のかうべと懐かしい……
馬はかうべをめぐらして
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
是に於てか彼かうべを振りて、我等此方こなたに止まるべきや如何いかにといひ、恰も一の果實このみに負くる稚兒をさなごにむかふ人の如くにほゝゑみぬ 四三—四五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そこ/\に暇乞いとまごひして我家に立歸りしに女房お梅は出迎いでむかへ御持參の金子きんすとゞこほりなく文右衞門殿どの請取うけとられしや如何いかにと云ふに長八かうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴僧あなた真個ほんとうにおやさしい。)といつて、はれぬいろたゝへて、ぢつとた。わしかうべれた、むかふでも差俯向さしうつむく。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
清きうしほにひたりつつ、かうべをあげてまさに日の出でむとする方に向へば、刃金はがねいかづちの連亙起伏する火山脈の極るところ
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
われは獨り閑室に坐するとき、かうべめぐらして彼の我師と稱するものを憶ふに、一種の奇異なる感の我を襲ひ來るに會ひぬ。世界は譬へば美しき少女をとめの如し。
かうべを回らせば徃時をかしや、世の春秋に交はりて花には喜び月には悲み、由無き七情の徃来に泣きみ笑ひみ過ごしゝが、思ひたちぬる墨染の衣を纏ひしより今ははや
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
折柄をりからすぎ妻戸つまどを徐ろに押しくる音す、瀧口かうべを擧げ、ともしびし向けて何者と打見やれば、足助二郎重景なり。はしなくは進まず、かうべを垂れてしをれ出でたる有樣は仔細ありげなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
彼は実にこの昏迷乱擾こんめいらんじようせる一根いつこんの悪障を抉去くじりさりて、猛火にかんことをこひねがへり。その時彼は死ぬべきなり。生か、死か。貫一の苦悶くもんやうやく急にして、つひにこの問題の前にかうべを垂るるに至れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
囘首萬里程 かうべを回らせば万里の程
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
導者しばらくかうべを垂れて立ち、さていひけるは、かなたに罪人を鐡鉤かぎにかくるもの事をいつはりて我等に教へき 一三九—一四一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
證據しようこ召捕めしとり候へと申わたされそれより瀬川せがは并に母おたけ請人うけにん君太夫きみたいふ松葉屋まつばや桐屋きりや以下いか呼出され瀬川の本夫をつとと云は何者なにものなるやと尋問たづねらるゝに瀬川はつゝしんでかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かうべめぐらしてわがをさなかりける程の事をおもへば、目もくるめくばかりいろ/\なる記念の多きことよ。我はいづこより語り始めむかと心迷ひてむすべを知らず。
勇將ゆうしやう傑僧けつそうまたおなじ。むかし行簡禪師ぎやうかんぜんじ天台智大師てんだいちだいし徒弟とていたり。或時あるとき群盜ぐんたううてかうべらる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝家にむごたゝりをなして天が下をば掻き乱さむ、と御勢ひ凛〻しくげたまふにぞ、西行あまりの御あさましさに、滝と流るゝ熱き涙をきつと抑へて、恐るおそるいさゝかかうべもたげゝる。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
重景ははづかしげにかうべし、『如何でかは』と答へしまゝ、はか/″\しくいらへせず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かれのもとにいたれるに、かれ殆んどかうべをあげず、汝は何故に日が左より車をはするをさとれりやといふ 一一八—一二〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「殿、覚えておはせ、御身おんみが命を取らむまで、わらはは死なじ」と謂はせも果てず、はたとかうべ討落うちおとせば、むくろは中心を失ひて、真逆様まつさかさまになりけるにぞ、かゝとを天井に着けたりしが
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ありし往時そのかみ、玉の御座みくら大政おほまつりごとおごそかにきこしめさせ玉ひし頃は、三公九けいかうべれ百官諸司袂をつらねて恐れかしこみ、弓箭きうぜん武夫つはもの伎能の士、あらそつて君がため心を傾ぶけ操を励まし
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かうべをあげよ、あげてかの者を見よ、テーベびとの目の前にて地そのためにひらけしはこれなり、この時人々皆叫びて、アンフィアラーオよ 三一—三三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
先刻より無言の仏となりし十兵衞何とも猶言はず、再度三度かきくどけど黙〻むつくりとして猶言はざりしが、やがて垂れたるかうべを擡げ、どうも十兵衞それは厭でござりまする、と無愛想に放つ一言
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なにか、自分じぶんなか一切すべてのものに、現在いまく、悄然しよんぼり夜露よつゆおもツくるしい、白地しろぢ浴衣ゆかたの、しほたれた、ほそ姿すがたで、かうべれて、唯一人たゞひとり由井ゆゐはまつうずる砂道すなみち辿たどることを、られてはならぬ
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その痩すると願ひあるによりて身輕きかしこの民は、みなかうべをめぐらしつゝふたゝびその歩履あゆみをはやめぬ 六七—六九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ひ/\、がく/\とうなじつてかうべれる。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)