)” の例文
次には「怖ろしき事四方において彼をおそれしめ、その足に従いて彼を追う」、そして「その力はえ、その傍には災禍わざわいそなわり……」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ヒューヒュー鳴るは風に吹かれて、木々のこずえが啼くのでもあろう。遥かの山の峰の方から、鋭く吠える獣の声はえた狼の声である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
思ふにゑを恐るゝこといと大いなりしときのエリシトネといふともそのためにかく枯れて皮ばかりとはならざりしならむ 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
桃太郎は意気揚々ようようと鬼が島征伐ののぼった。すると大きい野良犬のらいぬが一匹、えた眼を光らせながら、こう桃太郎へ声をかけた。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ふだん陰気なくせに、一たん向けられると、何という浅ましくがつがつ人情にえている様子を現わす年とった男だろうと思う。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
〔譯〕あさにしてくらはずば、ひるにしてう。わかうして學ばずば、壯にしてまどふ。饑うるは猶しのぶ可し、まどふは奈何ともす可からず。
しばらく好きな書籍の顔も見ずに暮していた捨吉のえた心は、まるで水を吸う乾いたかめのようにその書籍の中へ浸みて行った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうして/\。支那人に椅子でも宛てがつてみなさい、じにするまでも、椅子に腰を下して、じつと写真に見とれてまさ。」
し彼のまなこにらまれんとも、互のおもてを合せて、ことばかはさずともせめては相見て相知らばやと、四年よとせを恋にゑたる彼の心はいらるる如く動きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
え切ってきりきりいたむ腹、かわき切ってひりひりいたむ喉、目は砂ぼこりでかすみ、腰に結びつけられた重荷のくびきの情け容赦のない重さ。
かく打ち謝罪わぶるときしも、幼児は夢を破りて、睡眠のうちに忘れたる、えと寒さとを思い出し、あと泣き出だす声も疲労のために裏涸うらがれたり。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
綾小路は目と耳とばかりで生活しているような男で、芸術をさえ余り真面目には取り扱っていないが、明敏な頭脳がいつも何物にかえている。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして小浜は、はるか左手のかすんだ、海岸線の北の方! この疲れとえの足で、まだ六里では私は落胆がっかりしました。もう足が意地にも、進まないのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
敵軍の飛行機の破損したのをつくろって、それで島をげ出す、その時に、島に迷ってえていた一匹の猫を哀れがっていっしょに連れて行く記事がある。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
隣人愛の教説者として有名な無腸公子むちょうこうし講筵こうえんに列したときは、説教半ばにしてこの聖僧が突然えに駆られて
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
弟の阿利吒は尊げなる僧のゑたる面色おももちして空鉢をささげ還る風情ふぜいを見るより、図らず惻隠そくいんの善心を起し、往時むかし兄をばつれなくせしことをも思ひ浮めて悔いつつ
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
自分は大した贅沢な生活を望んで居るのではない、大した欲望を抱いて居るのではない、月に三十五円もあれば自分等家族五人がえずに暮して行けるのである。
子をつれて (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
この東京にはえに泣いている人間が数えきれぬ程あるのに、なんの意味もない、あの園遊会騒ぎは何だ! なるほど法律は正義をまもってくれているのかも知れん。
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
父よ、父よ、あわれんで下さい、私たちはえかわくようにあなたのお顔を見たがっております。
魚と蠅の祝日 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
えた者が食物をつかもうとして、われを忘れて手をのばしている間は、まだ仕合わせである。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それはどうでもいいとして、この話は、話題にゑて居る田舎ゐなかの人々を喜ばせた、当分の間。
讀書どくしよかれ病的びやうてき習慣しふくわんで、んでもおよれたところものは、れが縱令よし去年きよねん古新聞ふるしんぶんらうが、こよみであらうが、一やうえたるもののやうに、屹度きつとつてるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
食物たべものといっては、昼からほとんど何をも取らない二人は、口も利けないほどえ疲れていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二人でえても離れて心配するよりいいというような泡鳴からの手紙を読むと、想思の人が東西を離れるようになるとは、ほんとに憂世うきよではあるといい、苦労をともにする人は
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そして其のただ一つの報いとして、彼女は赤ん坊を抱いたまま棄てられて了った。彼女はいつも勇敢に闘って行った。しかし彼女は寒さとえとに対する不平等な闘いに負けた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
十二人は正体もなく寝框ねかまちにころがっていたが、どうやら命の瀬戸を切りぬけたようすなので、誰も彼も生きかえったような心持になり、粮米ろうまいを出してまずえをふさぐ仕事にとりかかった。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
若し英雄ありて時をすくはずんば天下の乱近くぞ見へにける。是より先き定信安田家より出でゝ白河の松平氏を継ぎ、賢名あり、年ゆるに及んで部内の田租を免じ婢妾を放ち節倹自ら治む。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
われをゑ死なしむるはいつの日か。
もつとみにくく美しくゑてひそめる仇敵あだがたき
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
わがゑたる心を照せよかし。
すぐれたゑを感じながら
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
われゑてある日に
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
浪人数万でましたが、仕官は出来ずえに迫り、一家離散、親子別離、ある者は猫の蚤とりなどという、賤業にさえたずさわり
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そは汝、貧しく、ゑつゝ、はたに入り、良木よききの種をきたればなり(この木昔葡萄ぶどうなりしも今荊棘いばらとなりぬ)。 一〇九—一一一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
幾度いくたびえ、幾度殺されそうにしたか解らないこのそこないの畜生にも、人が来て頭をでて、おまけに、食物くいものまでも宛行あてがわれるような日が来た。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一体えた人間に同情して餅を与える心、それは切実なもので水が高い所より低い所へ就くのと同じ必然である筈です。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
貸してえないようにしてやって下さい。おねがいです。僕の跡を追いますから、どうかやさしくなだめてやって——。
秀麿の心理状態を簡単に説明すれば、無聊ぶりょうに苦んでいると云うより外はない。それも何事もすることの出来ない、低い刺戟にえている人の感ずる退屈とは違う。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まして定基の妻からは、それこそえたる者が人の美饌を享くるを見るおもいがしたろうことは自然であって、余計にもしゃくしゃが募ったろうことは測り知られる。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
計らずもその夢寐むびに忘れざる姿を見たりし彼が思は幾計いかばかりなりけんよ。ゑたる者のむさぼくらふらんやうに、彼はその一目にして四年よとせの求むるところを求めんとしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しミツシヨンより金をもらこと精神上せいしんじやうかれかれ教会けうくわいの上にがいありとしんずればたゞちに之をつにあり、我れゆるとも可なり、我の妻子さいしにして路頭ろとうまよふに至るも我はしのばん
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
読書どくしょかれ病的びょうてき習慣しゅうかんで、んでもおよれたところものは、それがよし去年きょねん古新聞ふるしんぶんであろうが、こよみであろうが、一ようえたるもののように、きっとってるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして庭の緑に眼を放ちながら、麺麭をちぎり卵をすくい……私がえを満たしている間、娘二人は両端に座を占めて、紅茶を飲みながら久しぶりの客をもの珍しそうに、東京の話
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
が、えた動物ほど、忠勇無双むそうの兵卒の資格を具えているものはないはずである。彼等は皆あらしのように、逃げまわる鬼を追いまわした。犬はただ一噛ひとかみに鬼の若者を噛み殺した。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
確かにこれはきよすぐれた魂の声だ、と悟浄は思い、しかし、それにもかかわらず、自分の今えているものが、このような神の声でないことをも、また、感ぜずにはいられなかった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
なさけで、ゑず、こゞえず、しか安心あんしんして寢床ねどこはひることが出來できた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ふふ。若い御隠居がこんな田舎で人間性にゑて御座る?」
絶えずゑたる心臓しんざううめくに似たり。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すぐれたゑを感じながら
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
なにを云やがる途方もねえ、世間に気兼ねして働かねえと? え死んだらどうするだア! ああ饑え死ぬとも饑え死ぬとも。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)