)” の例文
おまけに散々な目にわされて、最後には命までも落すようなことになった相手は、侍従じじゅうきみ、———世にう本院の侍従であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
青笹村大字糠前ぬかのまえの長者の娘、ふと物に取り隠されて年久しくなりしに、同じ村の何某という猟師りょうしる日山に入りて一人の女にう。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
良心は疾呼しっこして渠を責めぬ。悪意は踴躍ゆうやくして渠を励ませり。渠は疾呼の譴責けんせきいては慚悔ざんかいし、また踴躍の教峻を受けては然諾せり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この奇禍にって、茫然と、薬びたしのわが身を、白いベッドの中に見出していたというのが偽らないぼくの気もちやら姿であった。
それはあたかも大火にった都会が、その莫大な災厄に由って建築の上にかねて計画していた新しい理想を実現する機会を見出し
階級闘争の彼方へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
今になると残されてよかったので、あの時連れて行かれようものなら、浦塩うらじおかどこかのろうで今ごろはこッぴどい目にってる奴さ。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
少し意地悪い人にったら、「西洋の旦那」という言葉のかげには、封建性が骨までみ込んだ一種の卑屈さがあるといわれるであろう。
日本のこころ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
いかに時頼、人若ひとわかき間は皆あやまちはあるものぞ、萌えづる時のうるはしさに、霜枯しもがれの哀れは見えねども、いづれか秋にはでつべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
南都の旧套仏教家の妨害にって、生前にはその官許を得られませんでしたが、死後、比叡山にこの授戒は行われたのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
おつたがにはると勘次かんじ幾年いくねんはなかつたあね容子ようす有繋さすがにしみ/″\とるのであつた。おつたは五十をいくつもえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「さうよ、もし一晩中外にゐたのだつたら、翌朝は屹度戸口の處で死んでゐたでせうねえ。この人、どんな目につて來たのでせう?」
郊外生活の地続き、猫の額ほどな空地あきちに十歩の春をたのしまうとする花いぢりも、かういふてあひつてはなにも滅茶苦茶に荒されてしまふ。
あゝ、当年豪雄の戦士、官軍を悩まし奥州の気運を支へたりし快男子、今は即ち落魄らくはくして主従唯だ二個、異境に彷徨はうくわうして漁童の嘲罵にふ。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いったい私たちの年代の者は、過去二十年間、ひでえめにばかりって来た。それこそ怒濤どとうの葉っぱだった。めちゃ苦茶だった。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
善良な者はそんなめにはわさない、あの料理屋の主婦おかみも、一種の悪党だ、医学士の犠牲にさしてもかまわないから犠牲にしたさ
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
胡虜こりょの不意をいて、ともかくも全軍の三分の二は予定どおり峡谷の裏口を突破した。しかしすぐに敵の騎馬兵の追撃にった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「どうぞとはこっちの言うことです。貴方あなたがいて下さるので、こんなひどい事件にっても私達は非常に気強くやっていますよ」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
文麻呂 なよたけ、お前はそんなところから僕の涙が見えるの?……(彼女の傍に走り寄り)なよたけ!……僕はずいぶん苦しい目にった。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
あんな目にって、ほうほうのていでわが家へ逃げ込んで来たのだから、目がさめるや否や、癇癪玉かんしゃくだまが勃発し、自暴やけがこみ上げて
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「気をつけなさい。ひどい目にうわよ。あんたを可愛かわいがってるねえさんのいうことだから聴きなさい。『はい』っていうもんよ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
私はツルゲネフの『猟人日記』を思いうかべつつ、再びうことの難かるべきこの詩的の一夜を、楽しく過さん手段を考えた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
上野寛永寺うえのかんえいじの楼閣は早く兵火にかか芝増上寺しばぞうじょうじの本堂も祝融しゅくゆうわざわいう事再三。谷中天王寺やなかてんのうじわずかに傾ける五重塔に往時おうじ名残なごりとどむるばかり。
小石川こいしかわ竹早町たけはやちょうなる同人社どうにんしゃの講師としてすこぶ尽瘁じんすいする所ありしに、不幸にして校主敬宇けいう先生の遠逝えんせいい閉校のむなき有様となりたるなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
抽斎は晩年に最もかみなりを嫌った。これは二度まで落雷にったからであろう。一度はあらためとった五百と道を行く時の事であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
やっぱりお前たちはだめだねえ。外の人とくらべることばかり考えているんじゃないか。僕はそこへ行くとさっき空でった鷹がすきだねえ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、言う意見もあるのだが、なまじ公けに事を持出すと、どんな目にうかも知れず、我が身可愛さに、みんな口をつぐんでいるのであった。
行かんと欲するところに行き、とゞまらんと欲するところに住まりて、さて不幸にはば、そは自らせるなれば、悔ゆることもあらざるべし。
いにしへ國民こくみん地震ぢしんつても、科學的素養くわがくてきそやうけてゐるから、たゞ不可抗力ふかかうりよく現象げんしやうとしてあきらめるだけで、これに對抗たいかうする方法はうはふ案出あんしゆつない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
他の一方では、あげられないことになりましたから、と材木高を口実に、ひっくりかえりそうな家が、あの大嵐にっても材木一本手入れせぬ。
今は可懐なつかしき顔を見る能はざる失望に加ふるに、この不平にひて、しかも言解く者のあらざれば、彼のいかりは野火の飽くこと知らでくやうなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おそらくわたくし想像さうぞうあやまるまい、じつてんわざはひ人間にんげんちからおよところではないが、今更いまさらかゝ災難さいなんふとは、じつ無情なさけな次第しだいです。
ほかの知らない人からコンナ目にわされたのでしたら、ただ矢鱈やたらに口惜しいばかりだったかも知れませぬが、相手が青柳君だったもんですから
挿絵と闘った話 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから吉田の頭には地震とか火事とか一生に一度うか二度遭うかというようなものまでが真剣に写っているのだった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
外部からの強暴な敵(私は病気をも外部と感ずる)と戦ってデスペレートな私は、内部よりの敵(彼女の変心)にって根本的に敗れてしまった。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「一体何と云ふ事になつたのであらう! もし之が本当に冗談でないとすると! そして誰が、何の権利があつて、人をこんな目にはせるのだ!」
けれども仮りにニイチェ一人を持ち出して来ると、その超人の哲学はたちまち四方からの非難攻撃にわねばならぬのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そんな風をした女をつれて松屋へ入って行くのが冷汗をかくようであったが誰れも知った人間にいはしないだろうかと恐る恐る二階に上ってゆくと
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
カイミアラのこのめちゃくちゃな突撃にって、ひっくりかえされて、闘いはろくに始まりもしないで、そのままおしまいになってしまったでしょう。
勘弁かんべんはいいが、——丁度ちょうどいいところでおめえにった。ちっとばかりきてえことがあるから、つきあってくんねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
妹と彼とは同じ屋内で原爆にったのだが、五年後になって異状が現れるということがあるのだろうか。……だが、妹は義兄の例を不安げに話しだした。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
用意なしと見たドイツ軍に大準備ができていて、猛烈な逆襲にい、連合軍はさんざん敗北。いちじは、大戦そのものの運命をさえ決定しそうに見えた。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
されば町を行けば、心ない童部わらべあざけらるるは元より、刀杖瓦石たうぢやうぐわせきの難にうた事も、度々ござるげに聞き及んだ。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
庸三は黙っていていたが、遠いところに離れていれば、博士にう機会が自由に作れるのだという気もした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうだ、たぶんあの女は、恋人が事故にったか、急病になったかしたのだ。きっと、それを知らないのだ。
待っている女 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
永「お前は以前もと大家たいけと云うが、わざわいって微禄して困るだろう、資本もとでは沢山は出来ぬが十両か廿両も貸そう」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
礼助としては、この種の質問にしばしばつてゐるので、何時も決つた返事をするより他に仕方がなかつた。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
或日海上で破船のやくい、同船の部下の者らとともに溺死を遂げた。そのち船は海浜へ打上げられたが、溺死者の死骸は終に発見することが出来なかった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
ここもつ(四四)せい諸矦しよこうあらはせり。越石父ゑつせきほけんにして(四五)縲紲るゐせつうちり。晏子あんしでてこれみちふ、(四六)左驂ささんいてこれあがなひ、かへる。
我軍の攻撃にって防戦したのであろうが、味方は名に負う猪武者いのししむしゃ英吉利イギリス仕込しこみのパテントづきのピーボヂーにもマルチニーにもびくともせず、前へ前へと進むから
その夜、姉娘は妹娘と同じ目にうのだ。今度の背景はすばらしいぜ。指折り数えて待っているがいい。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)