)” の例文
腹がっていると頭に利くから、稽古は食後に限ると教えてくれるものもあった。唯さえ陥り易い習癖を努めて実践躬行したのである。
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
腹もっていた。寒気は、夜が深まるにつれて、身に迫っていためつけて来た。口をけば、残り少ない元気が消えてしまうのをおそれた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
三「これは恐れ入りやすな、わたくしの腹のった顔が貴方にちゃんと解るなんてえのは驚きやしたなア、何うか頂戴致したいもので」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それで私はどうなる事かと思ってじっと目を閉じているうちに、外はすっかり夜になり、段々お腹はってくるし。たまらなくなったのです。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「さあ、もう元気を出して、食事にしよう。お父さんは、莫迦ばかに腹がったぞ」と父はわざと快活に言った。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
腹がればどんなまづいものでも美味しくなる。又咽喉が渇けば一杯の冷水でも非常にうまい。そして又、疲れゝばちよつとした居眠りでもいい気持になる。
が、場合が場合なので、腹がったというようなことを明らさまにいいだしかねていたのであった。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「だが、餓鬼のこった。まさかに草鞋を穿くようなこともあるめえ。いずれ何処からか這い出して来るだろう。なにしろ、腹がって来た。そこらで蕎麦でも手繰たぐろう」
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あれはただ腹がった、かぶらのくきみつく、うまい、きた、ねむり、起きる、鼻がつまる、ぐうと鳴らす、腹がへった、麦糠むぎぬか、たべる、うまい、つかれた、ねむる
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
内に寝ていてさえ空腹ひだるうてならぬ処へなまなか遠路とおみち歩行あるいたりゃ、腰はいたむ、呼吸いきは切れる、腹はる、精は尽きる、な、お前様、ほんにほんに九死一生で戻りやしたよ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして一言ひとことの云ひ返しも呟きもせず、出掛けて行つた。そのときは九時であつたが、彼が歸つて來たのはもう眞夜中まよなかだつた。彼はすつかりお腹をらして、疲れ切つてゐた。
ところが、煙草がなくなるころには、いつかマッチ箱の中の三銭も落してしまい、もう大福餅一つ買えなかった。それほど放心した歩き方だったのでしょう。腹はってくる。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
腹がってもひもじゅうない、というようなものには食わせなくてもよい。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
水牛をうて乳を取るを専務とする、その伝説に昔は虎が昼間水牛を守り夜になって退いた、しかるに一日腹る事甚だしくついに腹立つ事甚だし、職掌柄やむをえず夕方水牛を村へ連れ帰る途上
「へエ、十手の手前か。飛んだ腹のる意地だね、親分」
……しゃべったら腹がった……
三の酉 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
重「はい大きに有難う、誠にとおとこに御苦労さま、婆アさま腹アったろう、何もないがおまんまア喰ってくがい」
擦りった石段の上に立った私は襟のつまった黒い服を着た老婦人に、仏蘭西人の事を訊ねると
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「要するに発句ほっくなんてものは現代生活に没交渉だという証明さ。あゝ、腹がった」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
気持よい空腹を感じながら、心づくしの食卓につくことが楽しみだった以前とはちがって、今のは、単に胃腑いのふが空っぽになった動物のひもじさに過ぎないけれど、とにかく腹はっていた。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
腹はるし、のどは渇くし、暑さで眼もくらみそうな気がしました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
要求する食物に不味まずいものなしだから腹がるにかぎる。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
腹がりはしませんか。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
恭「あの親方がもう止せってえから、羽根を突くのは明日あしたにおしよ、日が暮れると暗く成るよ、おまんまを喰べないと腹がるとさ、早く寐ないと眠く成るとさ」
おそくなった。晩くなった。あゝ、腹がった」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「腹がったろう、弁当でも食わんけゃ?」
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
へえゝ釣堀つりぼりさまとは。小「なんだね釣堀つりぼりだね。梅「有難ありがたい……わたしは二十一にち御飯ごぜんべないので、はらつたのがとほぎたくらゐなので、小「ぢやア合乗あひのりでかう。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「行こう。腹がった」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小「お前さんは酒を三杯飲んだろうが、私は待ってる間におかちんを二タ切焼いて呉れたぎりだから腹がって仕様がない、もう直に戌刻よつになりますから早くきましょう」
常陸ひたちの国に知己しるべがあるから金の無心に行ったがあては外れ、少しでも金があればもとより女郎でも買おうというたち、一文なしで腹がって怪しい物を着て、小短いのをして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
怖々こわ/″\四辺あたりを見ると、瓜番小屋に人もいない様だから、まアい塩梅と腹がってたまらぬから真桑瓜を食しましたが、庖丁がないから皮ごとかじり、空腹だから続けて五個いつつばかり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わしが重役と中の悪い処から此の様に浪人致し、お前は何も知らない身分で、住み馴れぬ裏家住居、わし内証ないしょう肌着はだぎまでも売ったようだが、腹のった顔も見せず、孝行を尽して呉れるに
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お供だで少し加減をすれば宜かったが、急いでっつけたで、えら腹がったから、二合出たのを酌飲くんのんじまい、酔ぱらいになって、つい身体が横になったところから不調法をして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うもわたくしはらつて歩かれませぬ、其上そのうへ塩梅あんばいわるうございまして。とふから仕方しかたなしに握飯むすび二個ふたつぜにの百か二百ると当人たうにんは喜んで其場そのば立退たちのくといふ。これ商売しやうばいになつてました。
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
家はえんで、ふてっくされ猪武者いぬしゝむしゃ、取っただけは飲んでしまっても仲間の交際つきあいと云うものは妙なもんで、何うか斯うか腹アれば飯い食ってまア……無理にという訳じゃアないんでげすが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わしゃア無一国むいっこくな人間で、いやにおさむれえへ上手をつかったり、窮屈におっつわる事が出来ねえから、矢張やっぱり胡坐あぐらをかいて草臥くたびれゝば寝転び、腹がったら胡坐を掻いて、塩引のしゃけで茶漬を掻込かっこむのがうめえからね
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
子供は葭簀張よしずッぱりに並べてある大福餅を見附け、腹がったと見え
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)