毛氈まうせん)” の例文
にしきふちに、きりけて尾花をばなへりとる、毛氈まうせんいた築島つきしまのやうなやまに、ものめづらしく一叢ひとむらみどり樹立こだち眞黄色まつきいろ公孫樹いてふ一本ひともと
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女は毛氈まうせんの上へ身を投げかけるやうに、消えも入りたい風情です。男の羽織と半纒を引掛けた淺ましい姿がたまらなく恥かしかつたのでせう。
鷲津の姉さんはまた女でも可成に碁の打てる人でしたから、部屋々々に毛氈まうせんなどを敷き、重い碁盤を置き、客が來ればその相手に成りました。
サウスケンシントン博物館にある毛氈まうせんの下図をいたラフアエルの大きな諸作は恐らく伊太利イタリイにもすくない傑作であらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
桟敷さじきのこゝかしこに欲然もえたつやうな毛氈まうせんをかけ、うしろに彩色画さいしきゑ屏風びやうぶをたてしはけふのはれなり。四五人の婦みな綿帽子わたばうししたるは辺鄙へんびに古風をうしなはざる也。
「まだ蒙古人もうこじん天幕てんと使つかふフエルトももらひましたが、まあむかし毛氈まうせんかはつたところもありませんね」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
円山や毛氈まうせんしきてほととぎす待つとはべりぬ十四と十五
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
毛氈まうせん唐草からくさからみてるゝ夢心地ゆめごゝち
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
母の夢、それは微温の毛氈まうせんです
赤い毛氈まうせんを掛けた机の上には何時でも父の好きな書籍が載せてありましたが、時には和算の道具などの置いてあるのを見かけたことも有ります。
毛氈まうせん老樹らうじゆもとにしきたばこくゆらせつゝ眺望みわたせば、引舟は浪にさかのぼりてうごかざるが如く、くだる舟はながれしたがふてとぶたり。行雁かうがん字をならべ帰樵きせう画をひらく。
こゝに、おみきじよふのに、三寶さんぱうそなへ、たるゑ、毛氈まうせん青竹あをだけらち高張提灯たかはりぢやうちん弓張ゆみはりをおしかさねて、積上つみあげたほど赤々あか/\と、あつくたつてかまはない。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
縁臺の毛氈まうせんまでいで、ひつそり靜まつてをりましたが、平次の聲を聽くと、さすがに店の中はザワめきます。
草が狐色きつねいろ毛氈まうせんを拡げ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
桟敷さじきのこゝかしこに欲然もえたつやうな毛氈まうせんをかけ、うしろに彩色画さいしきゑ屏風びやうぶをたてしはけふのはれなり。四五人の婦みな綿帽子わたばうししたるは辺鄙へんびに古風をうしなはざる也。
とある屋形船、すだれも卷き上げた盃盤の中に、毛氈まうせんを掛けた横木にもたれて、娘が一人介抱されてゐるのでした。
陽氣やうきで、障子しやうじ開放あけはなしたなかには、毛氈まうせんえれば、緞通だんつうえる。屏風びやうぶ繪屏風ゑびやうぶ衣桁いかう衝立ついたて——おかるりさうな階子はしごもある。手拭てぬぐひ浴衣ゆかた欄干てすりけたは、湯治場たうぢばのおさだまり。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祖父おぢいさんはくことがきで、あか毛氈まうせんうへおほきなかみをひろげて、おそくなるまでなにかよくきましたが、そのたびねむをこすり/\蝋燭らふそくたせられるのはおゆうさんやとうさんの役目やくめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
毛氈まうせん老樹らうじゆもとにしきたばこくゆらせつゝ眺望みわたせば、引舟は浪にさかのぼりてうごかざるが如く、くだる舟はながれしたがふてとぶたり。行雁かうがん字をならべ帰樵きせう画をひらく。
もう店を仕舞つたのでせう、肩に擔いだのはクルクルと卷いた毛氈まうせんが二三枚、片手に大きな箱を提げて、何のこだはりもなく百姓地の方へ入つて行くのです。
お葉はさう言ひながら、二人を招じ入れて、赤い毛氈まうせんの上、煙草や茶を運ばせるのでした。
さてその家にては家内をよく/\清め、わきて其日正殿でんととなふる一塩垢離しほこりにきよめこゝを神使じんしせきとし、綵筵はなむしろしきならべ上座に毛氈まうせんをしき、上段のかたどり刀掛をおく。
妻戀稻荷の前の茶店——晝は婆さんが一人今戸燒いまどやきの狸のやうに番人をして居りますが、日が暮れると自分の家へ引揚げて、茣蓙ござ毛氈まうせんいだまゝの縁臺が、淋しく取殘されてゐるところに
見ると、丁度船の中程、眞新しい茣蓙ござ毛氈まうせんを染めて、夏姿ながら眼の覺めるやうな娘が一人倒れてをり、それを取卷いて、四、五人の者が、仕樣こともなく、たゞウロウロしてゐるのです。
と平次、赤い毛氈まうせんを掛けた床几しやうぎを引寄せ加減に、腰から煙草入を拔きます。
飛鳥山の花見の行樂に、埃と酒にすつかり醉つて、これから夕陽を浴びて家路を急がうといふ時、跡片付けで少し後れたガラツ八が、毛氈まうせんを肩に引つ擔いだまゝ、泳ぐやうに飛んで來たのでした。