)” の例文
行っても行っても遠くなるもの、木曾きそ園原そのはらの里というところのははき。これはわたしの郷里くにのほうに残っている古い言い伝えです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
筆をいて、そっと出て見ると、文鳥は自分の方を向いたまま、とまの上から、のめりそうに白い胸を突き出して、高く千代と云った。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そんなことはありません。あのれているまりをどうして、ほかのものがつかめるものですか!」と、こうはほめました。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その沈黙はたちまちのように、色を失った陳の額へ、冷たい脂汗あぶらあせを絞り出した。彼はわなわなふるえる手に、戸のノッブを探り当てた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かえってみて、何か、かおのようなにおわしさが、その老梅のものではなく、自分のうしろに立っている巫女みこ直美なおみであることを知った。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白い細かい花がこぼれておりましょう。うつ、こてまり、もち、野茨のいばら——栗の葉も白い葉裏をひるがえしておりましょう。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もう、やがて雪がやつて來るが、それにとぢ籠められては、山へのぼつて、でも切るより仕かたがなくなるさうだ。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
この三時間というものは羊歯しだのうえのイナゴのうごきも聞こえないのである。鳩はみんなそのとまのうえで眠っている——何の羽ばたきもない。
三十分ほどたったころ一つの兵営から古藤は岡に伴われてやって来た。葉子は六畳にいて、貞世を取り次ぎに出した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
生涯うもで暮らすばっかりやいいなさって、自分は死んでもあんな男と結婚せエへん、どうぞ助ける思てあの男と手エ切れるようにしてくれへんか
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
裏の山から出て、わたしの村の中ほどをよこぎつて、湖水へ流れこむ川を、千ぼんがはといひました。千本木川——どうして、そんな名まへがついたのでせう。
千本木川 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
「そうです。若い婦人、ふた兼子かねこという名前らしいです。弾丸のあたったのは、矢張り心臓の真上です」
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
失望がつかりした医者は、最後に小娘を連れて、黒猩々の檻の前に立つた。猩々は手に食物たべもの破片かけらを持つて、お婆さんのやうにとまの上に、ちよこなんと坐つてゐた。
瑠璃子が赤阪ひとで先に降り、次に春代が四谷よつや左門町さもんちょうで降りると、運転手はあらかじめ行先を教えられているので、塩町しおちょうの電車通から曲って守阪かみざかを降りかけた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
トンチトンチたちは舟から上って、舟を引き上げるとすべを手分けして探した。そのうちに、ひとりがエゾウバユリやエゾエンゴサクの料理のつまった穴を見つけた。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
日はなり。あららのたらたらざかに樹の蔭もなし。寺の門、植木屋の庭、花屋の店など、坂下をさしはさみて町の入口にはあたれど、のぼるに従いて、ただはたばかりとなれり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(ホ)谷方・渡方 因幡いなば八頭やず郡河原村大字谷一ツ木及びわたりひと、この地は大川に接しているから渡は文字通りにも解することができるが、ワダは必ずしも水辺には限らぬ地名である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
馬爪ばづのさしぐしにあるひと本甲ほんかうほどにはうれしがりしものなれども、人毎ひとごとめそやして、これほどの容貌きりよううもとはあたら惜しいもの、ひとあらうならおそらく島原しまばらつての美人びじん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
染めに特色があって、「てえち」と称する樹の皮をせんじて染め、更にそれを鉄分の多い泥土に漬けて染め上げます。それは黒ずんだ美しい茶褐色を呈します。模様は凡て絣で出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ああ五月! 五月は野の林にの白い花咲く月
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
恩田さんは真珠株式会社の重役でした。
おれは二十面相だ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
せながさしょえば はんの
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
枝かきわけてラウラ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
木蔭こかげのとまり
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
はたちましたけれど、いっこうからすはうたをうたいませんでした。からすは、毎日まいにちとまりまってじっとしていました。
からすの唄うたい (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれは、ひとの縁日へいった時、米屋の横の、どぶっぷちに捨てられていたのを拾ってやったのだが、また宿なしになってしまやしないかしら。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのすみに文鳥の体が薄白く浮いたままとまの上に、有るか無きかに思われた。自分は外套がいとう羽根はねを返して、すぐ鳥籠を箱のなかへ入れてやった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また、鼻歌の声が、油しめの音のような呻吟しんぎんの声と一つになった。とたれか、猪熊いのくまおじまくらもとで、つばをはきながら、こう言ったものがある。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とうとうおれもうもになってしまった。これから地面の下で湿気を食いながら生きて行くよりほかにはない。——おれは負け惜しみをいうはきらいだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
蘇山人湖南の官衙かんがにあること歳余さいよやまいを得て再び日本に来遊し幾何いくばくもなくして赤坂あかさかひとの寓居に歿した。
日はなり。あららのたらたら坂にの蔭もなし。寺のもん、植木屋の庭、花屋の店など、坂下をさしはさみて町の入口にはあたれど、のぼるに従ひて、ただはたばかりとなれり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ある夜、その自動車が新宿の雜閙で止まつてゐるあひだ、ふと、横を見ると、ゼイちくやサンを机にすゑた易者たちが五、六名も店をならべて、鋪道の散歩者を呼びあつていた。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
そんならそなたは姉さんのために一生をうもにしてしまいなさるのか
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この山中には五つ葉のうつありて、その下に黄金を埋めてありとて、今もそのうつぎの有処ありかを求めあるく者稀々にあり。この長者は昔の金山師なりしならんか、このあたりには鉄を吹きたるかすあり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
さはらかひなだるげにしづ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
せながさしよへば、はんの
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
二人ふたりは、カチカチとひょうしをたたいてくる紙芝居かみしばいのおじさんと、ドンドンとたいこをたたいてくるおじさんの二人ふたりについてはなしたのであります。
もののいえないもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし縁側えんがわへ出て見ると、二本のとまの間を、あちらへ飛んだり、こちらへ飛んだり、絶間たえまなく行きつ戻りつしている。少しも不平らしい様子はなかった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これも明暗の斑点はんてんの中に、とまをあちこち伝わっては、時々さも不思議そうに籠の下の男を眺めている。男はその度にほほみながら、葉巻を口へ運ぶ事もある。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
またもひどい疼痛とうつうが襲い始めた、葉子は神のにかけられて、自分のからだが見る見るやせて行くのを自分ながら感じた。人々が薄気味わるげに見守っているのにも気がついた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「バカバカしいや、いまから帰ったって、また蛾次郎足をもめのこしをさすれのと、師匠ししょうにスリコみたいにこき使われちゃまいってしまう。どこかですこし、うまい道草はねえかしらなあ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この山中にはいつのうつありて、その下に黄金を埋めてありとて、今もそのうつぎの有処ありかを求めあるく者稀々まれまれにあり。この長者は昔の金山師なりしならんか、このあたりには鉄を吹きたるかすあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……歌の、ははきのような二人ふたりおんながある。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はんのもごさ、降りでても
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぼくは、おとなりのしょうちゃんと二人ふたりで、カチ、カチと、ひょうしをたたいて、近所きんじょを、用心ようじんにまわりました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
僕は戸をあけて廊下へ出、前の炉の前へ急いで行つた。それから椅子に腰をおろしたまま、覚束おぼつかない炎を眺め出した。そこへ白い服を着た給仕が一人を加へに歩み寄つた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鳥がとまの上をちらりちらりと動いた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はんのもごさ、りでても
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
小鳥ことりは、そんなこととはらず、あさからかごのなかでとまりにとまって、ないたり、さえずったりしていました。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とりとまうへをちらり/\とうごいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)