“むし”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ムシ
語句割合
53.6%
12.2%
11.3%
8.7%
4.8%
3.7%
1.3%
1.0%
無視0.8%
牟子0.3%
0.3%
0.3%
昆虫0.3%
0.2%
無始0.2%
無私0.2%
0.1%
本能0.1%
爬虫0.1%
0.1%
0.1%
蛔虫0.1%
0.1%
蠧魚0.1%
0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
手取早く形容すれば、映画のリチャード・バーセルメスをやや日本化した様な顔つきの、利巧相りこうそうではあるが、むしろあどけない青年だ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
翌る日平次が谷中の清養寺へ行つたのは、まだ辰刻いつゝ少し過ぎ、お類が朝の膳を片附けて、寺男の彌十は庭の草をむしり始めた時分でした。
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
てついている氷の道を踏んで、もう元日ではあるが、まだ真っ暗な天地の中へ、毛をむしられた寒鳥かんどりのように、悄々しおしおと出て行った。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歩きながら道傍みちばたの豆の葉を、さっとむしりとっても、やはり、この道のここのところで、この葉を毟りとったことがある、と思う。
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『それはわかつてる、大方おほかたかはづむしぐらゐのものだらう』とつて家鴨あひるは『しかし、ぼくくのは大僧正だいそうじよううしたとふのだ?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
雪頽なだれといふ事初編しよへんにもくはしくしるしたるごとく、山につもりたる雪二丈にもあまるが、春の陽気やうきしたよりむし自然しぜんくだおつる事大磐石だいばんじやくまろばしおとすが如し。
いつの間にやら殆ど全部むしばまれて、それに黄褐色おうかっしょくのきたならしい斑点はんてんがどっさり出来てしまっていることに、その朝、私は始めて気がついたのだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それは、ふたりのともだちの消息しょうそくがわからないということよりも、なかでいちばんうつくしいのは、はなひかりであると、がいったというなら、自分じぶんは、まったく無視むしされたためです。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは昨日きのふひるすこぎ、あの夫婦ふうふ出會であひました。そのときかぜいた拍子ひやうしに、牟子むし垂絹たれぎぬあがつたものですから、ちらりとをんなかほえたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
病余孤独の身は家を修むる力なく蔵書は唯むしの喰うにまかすより外はなかったからである。
写況雑記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は急にそわ/\して左の手で頭の毛をむしるようにきながら
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その癖おそろしく素敏すばしっこい昆虫むしめが、とても我慢が出来ないほどチクチクと彼のからだすものだから、手を一杯にひろげて彼は螫された箇所ところをポリポリ掻きむしりながら、思わず
ちょうど、のみで、地肌をむしり取ったように夜の色が露出していた。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無始むしの昔から無限の末の世まで、続いて絶えない母と子との問題であるが故に、ことにその感を深くするものである。読者をただ眼前の人のみに求めた私たちの態度にも懺悔ざんげすべきものが至って多い。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天下の羣小ぐんしょうさしまねいで、いたずらにタイモンのいきどおりを招くよりは、らんを九えんき、けいを百けいえて、ひとりそのうち起臥きがする方が遥かに得策である。余は公平と云い無私むしと云う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妙源 ——血でひたひたになった本堂の隅へ、悪魚の泳ぐように這いつくばって、とかげのような舌のきれむしりながら、「執念が何だ、邪婬の外道が何の法力に叶うかい」
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
一人の屠手は赤い方の鼻面を確乎しつかおさへて、声をはげまして制したり叱つたりした。畜生ながらに本能むしが知らせると見え、逃げよう/\と焦り出したのである。黒い佐渡牛は繋がれたまゝ柱を一廻りした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
地を這ふ爬虫むしの一生、塵埃ごみめて生きてゐるのにもたとふれば譬へられる。からだは立つて歩いても、心は多く地を這つて居る。
各〻又我が火焚き塲の傍にあつまり座して且つだんじ且つくらひ、けば即ち横臥わうぐわして漁獵の夢抔をむしびしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「——おむしがたかっているかもしれないから、べつな所へ置いて、お肌着もお下帯も、熱い湯にひたして洗わせますように」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けうに乗じて横臥わうぐわすれば、時々笹蝨ささむしたいして眼をますあり、痛痒つうしやう頗るはなはだし、之れささを臥床となすを以て、之に寄生せるむしひ来れるなり、夜中吉田署長きうに病み、脉搏みやくはく迅速にして発熱はつねつ甚し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「じたい、長崎殿の陣中へ出向いて、わしに兵法の講義をしろとは、まるではなしが、あべこべじゃなかろうか。そちらは実戦の専門家じゃろ。こちらは書物の蠧魚むしに過ぎん」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
種彦はわが秘蔵の宝をもよしむしが喰うならば喰うがままにと打捨てて置く事にした。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして、年ばえもそう大しては違わない、一つか二つほど上であろう。色が白くて、笑靨えくぼが深かった、笑うと、すこしむしっている糸切歯やえばが唇からこぼれて見える。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)