鼻翼こばな)” の例文
そうなると、その大いりやま頂上いただきが、全く鼻翼こばなすそかくれてしまって、そこと鼻筋の形とが、異様に引き合い対照を求めて来る。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は愛す、……汝は愛す、……彼は愛す、—— amareアマーレ の第一変化を、はちきれるばかりに鼻翼こばなを膨らませ、息も絶え絶えに繰りかえす。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鼻翼こばなの所はおしろいが剥落ちてゐて、一寸突いたらビリビリと破けさうな感じがする。
三等車の中(スケッチ) (新字旧仮名) / 中原中也(著)
赤く、差恥に染んだ時、濃い白粉の刷かれている時——その二つながらの時に、囁いた言葉——張り切って、艶やかな四肢、閉じている眼瞼のうるおい、喘ぐ呼吸に動く鼻翼こばな、少し開いた脣と、歯。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
すると、鼻翼こばなが卑しそうにうごめいて、その欲情めいた衝動が、渦のような波動を巻いて、全身に拡がっていった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
青前掛のゴオルキイは、鼻翼こばなをふくらませて、ふうん、といなないてから
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それでなくとも、鼻翼こばなや目窪や瞳の光りなどにも、何となく、目前の不吉を予知しているような兆が現れているので、最早寸秒さえもおしまなくてはならぬ時期に達しているのではないかと思われた。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)