鼈甲色べっこういろ)” の例文
まして光をうけている部分は、融けるような鼈甲色べっこういろの光沢を帯びて、どこの山脈にも見られない、美しい弓なりの曲線を、はるかな天際にえがいている。……
女体 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
柱も敷板も窓框まどがまちも、みなつやつやと鼈甲色べっこういろに拭きこんであり、きちんと置かれた道具類も高価な品ではないが、たいせつにされてきた年月のあかしのように
日本婦道記:萱笠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
時代をつけると言ってしょっちゅうほおや鼻へこすりつけるのであぶら滲透しんとうして鼈甲色べっこういろになっていた。
夏目漱石先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その汁がみて鮎が鼈甲色べっこういろになりますからそれを炙焼あぶりやきに致しますとどんなに美味うございましょう。このお料理は鮎ばかりに限りません。外のお魚に用いても結構です。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
多く加えると油がパチパチね出して大変だ。そこがなかなかむずかしいので、上手に酒を加えると油と砂糖がたがいに溶け合って鼈甲色べっこういろに透通ったものが出来る。それを長崎で色付油いろつけあぶらという。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)