しりぞ)” の例文
お屋敷へ申出でましたところで、剛直まっすぐな方は斬られしりぞけられ、残るは便佞べんねいの者ばかり。私風情の訴訟を、真面目に取次いでくれる方もございません。
この時の事勢においてこれを抑制よくせいすることあたわず、ついに姑息こそくさくで、その執政をしりぞけて一時の人心をなぐさめたり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やがて文林郎内台御使ぶんりんろうないだいぎょしを授けられたが、その同僚に雲石不花うんせきふかという者があって、これと仲が悪かったので、そのために讒言ざんげんをせられて、雷州の録事ろくじしりぞけられた。
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
梅は世にまれなる美人であつた。いとけなくして加賀中納言斉泰なりやすの奥に仕へたが程なくしりぞけられた。それがしと私通したからである。梅は暫くお玉が池の柏軒の許に潜んでゐて、此に至つて養玄に嫁した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お屋敷へ申出でましたところで、剛直まつすぐな方は斬られしりぞけられ、殘るは辯佞べんねいの者ばかり。私風情の訴訟を、眞面目に取次いでくれる方もございません。