黒樫くろがし)” の例文
お甲は、取り残していた四尺ほどの黒樫くろがしの木剣を出した、武蔵が間でうけとった。り味と、重さと固い触感とが、に握ると、離したくない気持を彼に起させた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でにぎりしめて、ぎゅうと、しごいてみると、伸びとりとの調和に、無限な味と快感がおぼえられる。武蔵は、お甲からもらった黒樫くろがしの木剣を常に離さなかった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正面脇の侍溜さむらいだまりに、木剣のかかっている壁が見える。そこへ行って、丑之助は一筋の黒樫くろがしを選んだ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵たけぞうはひとり歩いていた。自己の対象となる何物もない山の中を、いらいらした眼つきを持ち、例の黒樫くろがしの木剣を杖に持ってである。彼はひどく疲れているらしかった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というと天堂一角、かたわらにいる原士の手から槍を取って、黒樫くろがしを低目に持ち、ずっと斜身しゃしんになったかと思うと、ピウッとごきをくれてつづらの横へ穂先をつけた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒樫くろがしの槍と朱柄の槍、せんせんと光を合わしてたたかっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
才蔵のやり黒樫くろがし宗旦そうたんみがき。き身である。水がれそうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)