鯱子張しゃちこば)” の例文
往来ですれちがう将校らの傲慢ごうまんな様子は、彼らの横柄おうへい鯱子張しゃちこばり方は、彼にひそかな憤怒ふんぬの念を与えた。彼は彼らに少しも道を譲る様子を見せなかった。
真黒まっくろな円い天窓あたま露出むきだしでな、耳元を離した処へ、その赤合羽の袖を鯱子張しゃちこばらせる形に、おおきひじを、ト鍵形かぎなりに曲げて、柄の短い赤い旗を飜々ひらひらと見せて、しゃんと構えて、ずんずん通る。……
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)