鬼胎おそれ)” の例文
もしや叱責こごと種子たねにはなるまいかと鬼胎おそれいだくこと大方ならず、かつまたしお文鰩とびを買って来いという命令いいつけではあったが
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼らは常にその良人に見捨てられては、たちまち路頭に迷わんとの鬼胎おそれいだき、何でもかじり付きて離れまじとはつとむるなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
だから吾が妻ながら時折は薄気味の悪い事や、うるさい事もないではなかったが、しかし、そうした妻の頭の作用はたらきに就いて私が内心すくなからず鬼胎おそれいだいていた事は事実であった。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あいての語気が強いので広栄は鬼胎おそれを抱いた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
胸に鬼胎おそれをかき抱き
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それが無かったのでその代りとして勧められた塩鯖しおさばを買ったについても一ト方ならぬ鬼胎おそれを抱いた源三は、びくびくもので家の敷居しきいまたいでこの経由わけを話すと、叔母の顔は見る見る恐ろしくなって
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
胸に鬼胎おそれをかき抱き
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)