南水域に鬼哭啾々きこくしゅうしゅうとして跡絶えず、妖気狭霧さぎりのごとくに立ちめて、大英帝国の憤激その極に達したのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ために、富田とんだの浦は血に赤く、河原は鬼哭啾々きこくしゅうしゅうとして、無残というもおろかなこと、長く、渭之津いのつの城に怪異妖聞かいいようぶんやむことを知らず、という結果になりました
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに世の中が変動する前には、安政の大疑獄以来、幾多有為の士を、再び天日てんぴの下にかえさずんでしまった牢屋の所在地だ。鬼哭啾々きこくしゅうしゅう、人の心は、そこの土を踏むだけで傷みにふるえる。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あの陣街道は鬼哭啾々きこくしゅうしゅうというところである
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
海に船幽霊ふなゆうれいのあるように、広野こうやの古戦場にも、また時として、武者幽霊むしゃゆうれいのまぼろしが、野末のずえを夜もすがらかけめぐって、草木もれいあるもののごとく、鬼哭啾々きこくしゅうしゅうのそよぎをなし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくさんだといっても、まだ素槍や素刀は、この辺を中心に、附近の山野を残党狩りに駈けまわっているし、死屍ししは、随所に、横たわっていて、鬼哭啾々きこくしゅうしゅうといってもよい新戦場である。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)