鬢付びんつけ)” の例文
紅がらにて染めたるジャム鬢付びんつけのやうなるバタなんぞ見る折々いつも気味わるしと思ひながら雨降る日なぞはつい門外の三田通みたどおりまでで行くにものう
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
毛髪がへばりついた鬢付びんつけ。貝殻が数個。それにコッペパン一つ。彼はそのコッペパンを食べるつもりで手にとったが、古くて皮がこちこちになっている。口に持って行ったが、歯が立たない。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
外科げくわなんとにやあ、鬢付びんつけみづらしてひやりときずにつけるくらゐところ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
六十を過ぎて鬢付びんつけたしなみ女郎と討ち死にと極めて銀使いける云々
名代福山なだいふくやま蕎麦そば(中巻第一図)さては「菊蝶きくちょうの紋所花の露にふけり結綿ゆいわたのやはらかみ鬢付びんつけにたよる」瀬川せがわ白粉店おしろいみせ(中巻第八図)また「大港おおみなと渦巻うずまきさざれ石のいわおに遊ぶ亀蔵かめぞうせんべい」
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)