高楼こうろう)” の例文
旧字:高樓
松をすかしてチラチラ見えるいくつものは、たち高楼こうろうであり武者長屋むしゃながやであり矢倉やぐら狭間はざまであり、長安歓楽ながやすかんらく奥殿おくでんのかがやきである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて一方には大厦たいか高楼こうろうにあって黄金の杯に葡萄ぶどうの美酒を盛る者あるに、他方には襤褸らんるをまとうて門前に食をう者あるがごとき
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
いわゆる大厦たいか高楼こうろうが軒を並べ、しかもどことなくゆったりした気分に包まれているのは、名古屋そのものを象徴していると言うべきでしょう。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
水上にさし出したる桟敷さじきなどの上に居るか、または水に臨む高楼こうろう欄干らんかんにもたれて居るか、または三条か四条辺の橋の欄干にもたれて居るか
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
と——躑躅つつじさきたち高楼こうろうにあたって、万籟ばんらいもねむり、死したようなこの時刻に、嚠喨りゅうりょうとふくふえがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この躑躅つつじさき高楼こうろうにとらわれている咲耶子さくやこをすくいださなければ、男として、鞍馬の竹童として、なんで生きてふたたび伊那丸いなまるや一とうの人々とこの顔があわされようか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)