)” の例文
と——お通は、両手に小石をつかみ、しぐらに、城太郎と二人の郷士が斬り合っている方へ飛び出して行った。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「須磨口からしぐらに、街道をすすんでくる一軍こそ、足利直義ただよしの主力。だが、あわてるなと申せ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その黄母衣組のさむらいが一騎に、ただの騎馬武者が五名ほど、一頭の裸馬を中に囲って、黄塵こうじんの中から次々に姿をあらわし、っしぐらに、眼のまえをよこぎって彼方かなたへ駈け去った。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糸屋は、斬れば斬れたであろう丈八を見向きもせずに捨てて、っしぐらに彼方あっちへ逃げてしまった。丈八が、沼泥どろだらけになって上った時には、もうその姿は遙かなものになっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝は夢にも思わなかった故郷の空へと、そして、かかる事とは夢にも知らない故郷の人々へと——空虚うつろな身と、おののく魂を乗せて、すでに、東海道をッしぐらに駈けさせているのであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は朱実あけみは恐かったのである。そうののしると、彼の手を払って、っしぐらに走ってしまった。そのむかし燈籠とうろう大臣おとどといわれた小松殿のやかたがあった跡だという萱原かやはらを、彼女は、泳ぐように逃げてゆく。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)