驀然ばくぜん)” の例文
声とともにがらがらと地ひびきをさせて驀然ばくぜんおどりだしたる一個の怪物が、富士男の顔をめがけてとびついた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
相悪あいにく大降り、おまけに、横尾谷から驀然ばくぜん吹き上ぐる濃霧で、足懸あしがかりさえ見定めかね、暫時茫然として、雨霧のしずまるをてども、止みそうもない、時に四時三十分。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
親王はこれを聴いて烈火の如く怒り、剣のつかに手を掛けて驀然ばくぜん判事席に駆け寄り、あわや判事に打ちかからんず気色けしきに見えた。判事総長は泰然自若、皇太子に向って励声れいせい一番した。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
と捨ぜりふで驀然ばくぜんとして、道なき道を「関山月」の曲の音をたよりに走り出しました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
猛然としてけ出した。驀然ばくぜんとして敵の一人を生捕いけどった。主人にしては大出来である。大出来には相違ないが、見ると十四五の小供である。ひげえている主人の敵として少し不似合だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夜が明けるとともに、張遼ちょうりょうは一軍を引いて、呉の陣へ驀然ばくぜん、攻勢に出てきた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)