かお)” の例文
「三十而立塩田子。言行寡尤徳惟馨。」〔三十ニシテ立ツ塩田子/言行とがすくなク徳かおル〕随斎はその時二十八歳であったのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
プンとかおくすの匂い、仮面材は年を経た楠の木なのである。パラパラとこぼれる木の屑は彫刻ほり台の左右に雪のように散り、また蛾のように舞うのもある。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その間も香炉からは煙りが立ち、微妙に部屋をかおらせている。その間もがんからは菫色すみれいろ燈火ひかりが、ほんのりと四方を照らしている。そうして聞こゆる催情的音楽!
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
色やかおりを悩ましいまでに発散はなすように、栞も、恋心を解放はなし、にわかに美しさを加えたのであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほんとに夢のような小さい室! その室を仄かにかおらせるものは、甘い阿片アヘンの匂いである。室を朦朧と照らしているのは、薄紫の燈火である。それは天井から来るらしい。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)