願望がんもう)” の例文
それだからどうぞ殿様に殉死を許して戴こうという願望がんもうは、何物の障礙しょうがいをもこうむらずにこの男の意志の全幅を領していたのである。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
玉虫 ひとに洩れては願望がんもうのさまたげと、現在の妹にも秘し隠したれば、おなじ家のうちに住みながら、玉琴もまだ知るまい。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……よくよくの名僧智識か、豪傑な御仁ごじんでないと、聞いてさえ下さりませぬ。——この老耄おいぼれが生れまして、六十九年、この願望がんもうを起しましてから、四十一年目の今月今日。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ウーム、その願望がんもうならば、かないましょう。いやきっとかなう。ご安堵あんどなされい」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、代助は今日まで、自分の脳裏に願望がんもう嗜欲しよくが起るたびごとに、これ等の願望嗜欲を遂行するのを自己の目的として存在していた。二個の相れざる願望嗜欲が胸に闘う場合も同じ事であった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それで余程前から武芸がして見たいと云う願望がんもうを持っていたが、つい機会が無かったので、何にも手を出さずにいた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)