順繰じゅんぐり)” の例文
中にも手紙を書くのと散歩とは欠かさなかった。方々に居る友達へ順繰じゅんぐりに書いた。大方端書はがきであった。彼は誰にも彼にも田舎生活の淋しい単調なことを訴えた。
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
これは妙だとながめていると、順繰じゅんぐりに下から押しあがる同勢が同じ所へ来るやいなやたちまちなくなる。しかもとりでの壁には誰一人としてとりついたものがない。塹壕ざんごうだ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
食事のおくれたごとく、寝る時間も順繰じゅんぐりに延びてだいぶ遅くなった。その上急に人数にんずが増えたので、床の位置やら部屋割をきめるだけが叔母に取っての一骨折ひとほねおりであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると三沢は、まだ機会が来ないから、もう少し、もう少し、と会見の日を順繰じゅんぐりに先へ送って行くので、自分はまた気を腐らした末、ついにその女のまぼろしを離れてしまった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)