雨竜あまりょう)” の例文
旧字:雨龍
結んだ口元をちょろちょろと雨竜あまりょうの影が渡る。鷺草さぎそうともすみれとも片づかぬ花は依然として春をともしく咲いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
峰の茶屋のある峠の上空に近く、巨口を開いた雨竜あまりょうのような形をしたひと流れのちぎれ雲が、のた打ちながらいつまでも同じ所を離れない。ここで気流が戦って渦を巻いているのであろう。
軽井沢 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一度は、たとえば、敦賀つるが湾でありました——絵にかいた雨竜あまりょうのぐるぐると輪を巻いて、一条ひとすじ、ゆったりと尾を下に垂れたような形のものが、降りしきり、吹煽ふきあおって空中に薄黒い列を造ります。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
敷島しきしまのさきに付けて吸ってみると、鼻から煙が出た。なるほど、吸ったんだなとようやく気がついた。寸燐マッチは短かい草のなかで、しばらく雨竜あまりょうのような細い煙りを吐いて、すぐ寂滅じゃくめつした。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)