きり)” の例文
幾ら歩いてゐてもきりが無いので、幸ひ眼に入つた海の上にかけ出しになつてゐる茶店に寄つて、そこにも店さきにはうつてある鰹を切つて貰ひ、一杯飮み始めた。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
こういう蔭口にはきりのないものだが、右にあげた二つなどは尾鰭おひれの付かない例にはいるだろう。夏が去り、秋が去り、冬が来て十一月の下旬、——島さんの家には珍しくも客があり、酒が始まった。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
數へればきりがない。晴れた朝など、これらの鳥が殆んど一齊に其處此處の溪から峰にかけて啼き立つる。茫然と佇んで耳を澄ます私は、私の身體全體の痛み出す樣な感覺に襲はるる事が再々あつた。
山寺 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)