隔絶かけはな)” の例文
円味をもったそでや、束髪そくはつなぞの流行はやって来た時世にあって考えると不思議なほど隔絶かけはなれている寛濶かんかつ悠暢ゆうちょうな昔の男女の姿や
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
新橋をつから汽車中言ひ暮して来たそれらの可愛いものからも、夫からも、彼女は隔絶かけはなれたところへ来た。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今になって見ると自分の為たこと考えたことは、帰国当時の心持からは大分隔絶かけはなれたものであるが、しかし自分としてはこれより外に道の歩みようが無かったと書いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
姉さんも矢張やつぱり婿養子をして、夫婦の間に子まで有つたが、病気するやうに成つてからといふものは、全く世の中と隔絶かけはなれ、僅かに長唄の三味線をさらつて薄命な一生を慰めて居た。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
父上おとつさんが斯様こん隔絶かけはなれた処に居る君の名前を呼ぶなんて——馬鹿らしい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)