陋居ろうきょ)” の例文
まだ燈火あかりもつけずに、牛込では、陋居ろうきょの主人をかこんでお仲間の少壮文人たちが三五人さんごにん談話の最中で、私がまだ座につかないうちにたれかが
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
御承知の大雅堂たいがどうでも今でこそ大した画工であるがその当時ごうも世間向の画をかかなかったために生涯しょうがい真葛まくずはら陋居ろうきょひそんでまるで乞食と同じ一生を送りました。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米次郎がその愛宕下の陋居ろうきょで、脳卒中で亡くなったのは、明治二十八九年ごろだった。……
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
陋居ろうきょとは二枚かけたる秋簾あきすだれ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
むかし、大川の河風にふかれて船の上で昼寝をした夢をしのびながら、陋居ろうきょに、お角力のひざまくらにして、やさしくでられながら彼女の生涯は終った。