阿関おせき)” の例文
旧字:阿關
阿関おせきの事なれば並大底でこんな事を言ひ出しさうにもなく、よくよくらさに出て来たと見えるが、して今夜は聟どのは不在るすか、何か改たまつての事件でもあつてか
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
先方さきは忘れたかも知らぬが此方こちらはたしかに日まで覚えてゐる、阿関おせきが十七の御正月、まだ門松を取もせぬ七日の朝の事であつた、もと猿楽町さるがくてうのあのうちの前で御隣の小娘ちいさいのと追羽根して
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父は歎息たんそくして、無理は無い、居愁ゐづらくもあらう、困つた中に成つたものよと暫時しばらく阿関おせきの顔を眺めしが、大丸髷おほまるまげ金輪きんわの根を巻きて黒縮緬くろちりめんの羽織何の惜しげもなく、我が娘ながらもいつしか調ふ奥様風
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)