たたかひ)” の例文
たたかひは何にせよ将門が京より帰つて後数年にして発したので、其の場所は下総の結城郡と常陸の真壁郡の接壌地方であり、時は承平五年の二月である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そのたたかひの如何に酷烈を極めたるか、如何に歩々ほほ予を死地に駆逐したるか。予は到底ここに叙説するの勇気なし。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
病がやうやくえたころ、程近い愛宕あたご神社まで散歩して蟻の歩いてゐるのを見る毎に、金瓶村、十右衛門裏庭での、大きい蟻と小さい蟻とのたたかひを想起するのであつた。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
自分は夕飯を済ましてから、二たびこの蟻のたたかひを見に来た。すると殆ど人目では見えなくなつた黄昏たそがれの中に、二つの蟻が先程とさう違はない場処に、先程とさう違はない状態に、闘をつづけてゐた。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)