間断ひっきり)” の例文
旧字:間斷
男は間断ひっきりなしにしゃべったが、フェリシテは上の空で聞いていた。やがて男は黙りこむと紙入から百フラン紙幣さつを一枚とりだして
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
声の聞こえる部屋の隅へきっと葉之助は眼をやったが、笑い主の姿は見えぬ。しかし笑い声は間断ひっきりなしにヒ、ヒ、ヒ、ヒと聞こえて来る。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年柄年中間断ひっきりなしに仕事を追ひ掛け片付けてそれでやっとどうやら廻って行く事が出来る。今日これきりできりになったといふ事はない。
夏蚕時 (新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
隣りの婆さん、此寒さに当てられて、間断ひっきり無しに咳き込むのが、壁越しに聞える。今朝の話では、筋向うの、嬰児あかんぼも、気管支で、今日中は持つまいと云う事だ。何しろ悪い陽気だ。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
赤児は火のついたように間断ひっきりなしに泣く。それを聞くと、母親というものは総身の血がふるえるほどに苦しく思った。で、お作もその身の食物を求めるよりもまず赤児の乳を尋ねまわった。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
それ以来間断ひっきりなしに呻いていて、ときどき吃逆しゃっくりがまじって、人が手でものべると、触られるのを嫌がって、一生懸命に押しのける身振りをする。
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
それに、電話がすぐそばにあるので、間断ひっきりなしに鳴ってくる電鈴が実にうるさい。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
夜は寝床にうずくまってあごを膝へ押しつけ、眼をかっと開いて、物音に耳を澄まし、大きく十字を切りながら間断ひっきりなしに
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
胸が間断ひっきりなしに込み上げてくる。涙は小児でもあるようにほおを流れる。自分の体がこの世の中になくなるということが痛切に悲しいのだ。かれの胸にはこれまで幾度も祖国を思うの念が燃えた。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
雨の音が一きわ騒がしくなって、風が煙突にうなり、庭園にわの方では木の枝の断切ちぎれて飛ぶ音がする。それに、猟犬どもが間断ひっきりなしに吠え立てるので、暴風雨あらしの叫びや樹々の軋る音も気圧けおされるくらいだ。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
女は間断ひっきりなしに例の忌わしい歎願をくりかえした。
見開いた眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)