開眼かいげん)” の例文
主は気が長いで、大方何じゃろうぞいの、地蔵様開眼かいげんが済んでから、つえ突張つッぱって参らしゃます心じゃろが、お互に年紀じゃぞや。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今年五月にもなれば、東大寺の四天王像の開眼かいげんが行はれる筈で、奈良の都の貴族たちには、寺から特別に内見を願つて来て居た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
或は多少の危険さへをかせば、談林風の鬼窟裡きくつり堕在だざいしてゐた芭蕉の天才を開眼かいげんしたものは、海彼岸の文学であるとも云はれるかも知れない。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
東大寺の大仏開眼かいげんの日からかぞえると七年目、天平てんぴょうもすでに末期の宝字三年、鑑真がんじん聖武しょうむ天皇の御冥福めいふくを祈りつつ草創した寺と伝えられる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
法然がその志に感心して自からその像に開眼かいげんしてくれた。法然が往生の後はその像を生身の思いで朝夕帰依渇仰していたが、やがて往生の素懐をとげた。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただこれに気づくと申しましても、気づくということは心の底から気づくことでなければならぬ。気づくと申しますのは信心の目を見開いた。あるいは仏の目を開いたいわゆる開眼かいげんであります。
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あれからすぐ、大仏開眼かいげん供養が行はれたのであつた。其時、近々と仰ぎ奉つた尊容三十二種好しゆがう具足したと謂はれる其相好が、誰やらに似てゐると感じた。其がどうしても思ひ浮ばずにしまつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「これから錫杖しゃくじょうの頭と、六大ろくだいかんを刻めば、あとは開眼かいげんじゃ」