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長高
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たけたか
朗に秋の気澄みて、空の色、雲の
布置匂はしう、
金色の日影は豊に快晴を飾れる
南受の縁障子を
隙して、
爽なる
肌寒の
蓐に
長高く
痩せたる貫一は
横はれり。
驚き見れば
長高き老紳士の目尻も
異く、満枝の
色香に惑ひて、これは失敬、意外の
麁相をせるなりけり。彼は
猶懲りずまにこの
目覚き
美形の同伴をさへ
暫く
目送せり。
紳士は
年歯二十六七なるべく、
長高く、好き程に肥えて、色は玉のやうなるに
頬の
辺には
薄紅を帯びて、額厚く、口大きく、
腮は左右に
蔓りて、面積の広き顔は
稍正方形を
成せり。