長巻ながまき)” の例文
おそろしく敏捷びんしょう精悍せいかんな敵が、虎之助のうしろへまわって、長巻ながまきを振りかぶり、あわや斬り下ろそうとしていたのを見つけたからであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声に応じて四天王、パッと正面へ躍り出るや、朱雀四郎は長巻ながまきを構え、玄武三郎はやりをしごき、白虎太郎は弓を握り鏑矢かぶらやをつがえて引き絞った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
千枝太郎に折らせた新しい烏帽子の緒を固く引きしめて、小源二も大きい長巻ながまきを引きそばめていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
云い終ると、しずかの手から長巻ながまきを受け取って、義経は、わずかの家臣と共に、表門へ斬って出た。静は、良人を送ると、母の磯の禅師の部屋へ
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長巻ながまきを揮って左右から数馬を目掛けて打ち込んで来た。身もかわさず左右の太刀をピューッと同時に振ったかと思うと長巻の柄を切り折っている。逃げようとするところをまた一振り。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ややもすれば神輿じんよを振り立てて暴れ出す延暦寺の山法師どもも、この頃はおとなしくときの味噌汁をすすって経を読んでいるらしい。長巻ながまきのひかりも高足駄の音も都の人の夢を驚かさなかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だが、後に捨てられてあった長刀なぎなたをふと拾い上げてみると、長巻ながまきは青貝、こしらえは黄金こがね、吉良家の定紋、梧桐きりの紋どころが散らしてあるではないか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五郎はあわただしく引っ返しゆかんとする時、橋の上より軍兵一人長巻ながまきをたずさえて出で、無言にて撃ってかかる。五郎は抜きあわせて、たちまちって捨つ。軍兵数人、上下より走り出で、五郎を
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
次の日、彼は身仕度して、長巻ながまきの野太刀を一本ひッげ、道案内の雑兵に舟をがせて、山東済州さんとうさいしゅう街道に渡った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)