鈍々のろのろ)” の例文
曇った鏡が人を映すように男は鈍々のろのろと主人を見上げた。年はまだ三十前、ふとじしの薄皮だち、血色は激したために余計紅いが、白粉おしろいとおして、我邦わがくにの人では無いように美しかった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今になつて考へて見ても随分好い感じのしないひとで、尻の大きい、肥つた、夏時などはそばへ寄ると臭気にほひのする程無精で、挙動ものごしから言葉から、半分眠つてる様な、小児心にも歯痒はがゆい位鈍々のろのろしてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)