釘附くぎづけ)” の例文
が、歌麿は腰の矢立を抜き取ったまま、視線を釘附くぎづけにされたように、お近の胸のあたりを見つめて動こうともしなかった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其処そこは雨がひどく洩るので、四方の戸を阿父おとうさんが釘附くぎづけにして自分の生れ無い前から開けぬ事に成つて居る。御参詣おまゐりの人も無い寺なので、内の者は内陣ないぢんで本尊様を拝む。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
梓が大学の業をえて、仏文の手紙の姫、年紀としは二ツ上の竜子に迎えられて、子爵の家をぐ頃には、地主の交替か、家主の都合か、かの隠家の木戸は釘附くぎづけ〆切しめきりとなって
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その隣に冠木門かぶきもんのあるのを見ると、色川国士別邸と不恰好ぶかっこうな木札に書いて釘附くぎづけにしてある。妙な姓名なので、新聞を読むうちに記憶していた、どこかの議員だったなと思って通る。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)