酔生夢死すいせいむし)” の例文
清貧と安逸と無聊ぶりょうの生涯を喜び、酔生夢死すいせいむしに満足せんとつとむるものたり。曇りし空の光は軒先にさえぎられ、障子しょうじの紙をすかしてここに特殊の陰影をなす。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
諸星と天使との大讃美大歓呼の中に生れし地に住みて、心に讃美の歌なく歓呼の声なくして生くるは酔生夢死すいせいむしである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「うむ。寝ている間は頭が働かない。酔生夢死すいせいむし不自覚也みずからさとらざるなりで、生きていても勘定カウントに入らない」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
武士の末流、浮浪ふろう、その他少数の智勇弁力の徒が、日に徳川の天下を顛覆てんぷくせんとそのすきうかがう時に際して、国民の多数は、酔生夢死すいせいむし、封建政治に謳歌おうかしたるもまたべならずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一度自覚して見ると、彼れの目に始めて影じたのは、その母国琉球のあわれなる境遇であったのであります。世に酔生夢死すいせいむしの同胞の真中に独り醒めている人ほど寂寥を感ずる者はありますまい。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
酔生夢死すいせいむしするほど馬鹿ばかなものはない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)