酒池肉林しゅちにくりん)” の例文
これをたとえば、大廈たいか高楼の盛宴に山海の珍味をつらね、酒池肉林しゅちにくりんの豪、糸竹しちく管絃の興、善尽し美尽して客を饗応するその中に、主人は独り袒裼たんせき裸体なるが如し。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
朝な夕な詩歌管絃しいかかんげん宴楽えんがくを張り、酒池肉林しゅちにくりんの栄華を極める身の上———ちょうど大昔の支那やロオマの王様のような境遇を、ぼんやりと脳裡に描いて楽んで居た。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ソロモン王の如きも女子をいやしめているけれども、彼は世にソロモンの栄華の称ある如く、金殿玉楼きんでんぎょくろう酒池肉林しゅちにくりんにおよそ人間として望み得らるべき物欲の限を満足せしめ
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
食物だけのことを望めば、人間はいかなる酒池肉林しゅちにくりんれても永く満足はせぬものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それは明治十八年頃のいわゆる鹿鳴館ろくめいかん時代で、晩年にはあんなゴチゴチの国粋論者、山県元帥やまがたげんすいでさえ徹宵ダンスをしたり、鎗踊やりおどりをしたという、酒池肉林しゅちにくりん、狂舞の時期があった。
杯盤狼藉はいばんろうぜき酒池肉林しゅちにくりん——というほどの馳走でもないが、沢庵たくあんの輪切りにくさやをさかなに、時ならぬ夜ざかもりがはずんで、ここ離庵の左膳の居間には、左膳、源十郎、仙之助に与吉。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
酒宴は真っ平だ。貴公らの眼や口には、酒池肉林しゅちにくりんが馳走に見えるか知らんが、わしの眼から見るとまるで芥溜ごみためを囲んで野犬がさわいでいるような気がする。そんな所へすえられて、わしを
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)