しりぞ)” の例文
実は父親として自分にも多少考えがあったのだけれど、それを言い張れば夫人の意向をしりぞけることになる。流石さすがの好人物も心平こころたいらかならぬを覚えた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
手に白刃を拔き持ちてかの女房を逐ひしりぞけ、大音に呼びけるやう。物にや狂ふ、女子をなご聖母マドンナいかでか汝がたすけを求めん。
為に黒田勢三百余忽ち討たれて少しくしりぞくのを、忠之怒って、中白上下うえしたに紺、下に組みの紋ある旗を進め励ます。睡鴎は然るに自若として牀に坐して動こうとしない。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
七生しちしようまでその願は聴かじとしりぞけたる満枝の、我のつらさを彼に移して、先の程より打ちも詬りもしたりけんを、猶慊なほあきたらで我が前に責むるかと、貫一はこらへかねてふるひゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
南嶽の慧思は山に水なきをうれうると二虎あり師を引きて嶺に登り地をいてほえると虎跑泉とて素敵な浄水が湧出した、また朝廷から詰問使が来た時二虎石橋を守り吼えてこれをしりぞけた
少年時代のいい話としては、学資を給与するから婿になれ、と富家から求められた時に、それでは学問をした効がないといってしりぞけて、独学することにして、長いこと小学校の教員をしておった。
中里介山の『大菩薩峠』 (新字新仮名) / 三田村鳶魚(著)
しかし当然伴う審美的しんびてき副産物をしりぞける必要もない。女性に於てもこの辺の消息を察している証拠には、当局の干渉にも拘らず、年々歳々海水着の寸を詰める。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と寛一君は力強くしりぞけた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と僕は無愛想にしりぞけた。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)